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第116回 自動車の“ダウンサイジング”を支える“過給”のテクノロジー

過給機のタイプ ターボチャージャー
 ターボチャージャーは、スイスのアルフレッド・ビュッヒによって1905年に発明されました。当初は鉄道用ディーゼルエンジンの出力向上などに用いられていましたが、その後、航空機用エンジンの出力向上と、空気密度が低下する高高度飛行時の性能向上のための機構として注目され、改良と小型化が進められます。
 さらに自動車用エンジンへの応用も研究され、1962年にはGMが、市販のガソリンエンジン車用に初のターボを設定しました(ただし、オプションとして)。


 ターボの基本は、1本の軸でつながっている一対の羽根車と、それを収めるハウジングです。羽根車の一方(タービンホイール)は、エンジンからの排気の流路上に置かれ、排気ガスの勢いによって回転させられます。すると当然、軸でつながっているもう一方の羽根車(コンプレッサーホイール)も同じ速度で回転します。この回転が生み出す遠心力によって空気を圧縮し、エンジンの吸気側に送り込むのが、ターボの基本的な作動です。

 原理的には比較的シンプルなものですが、羽根車のサイズ、重量、形状、ハウジングの内部形状などによって、その効率や特性は大きく変わります。また、ターボを構成する要素として不可欠なのが、タービンホイールの回転数を制御する機構と、加圧によって温度が高まった空気を冷やすインタークーラーです。

 タービン/コンプレッサーホイールは、エンジンの回転数にほぼ比例して回転数を高めていきます。モノによっては1分間に20万回転以上という超高速で回転しますが、エンジンの構造上、一定以上に圧縮した空気を送り込んでも意味がなく、むしろトラブルのもとになる場合があります。また、羽根車自体も、一定以上の回転数に達すると破壊されてしまいます。
 そのような事態を避けるため、ターボは状況に応じて排気ガスの一部を別通路に逃すことで、タービンに当たる排気ガスの量を調整する仕組みを備えています。いくつかのタイプがありますが、主流となっているのは「ウェストゲート」と呼ばれる機構です。

 また、空気は圧縮すると温度が上昇する特性を持っていますが、温度が高まると膨張して酸素密度が薄まってしまうので、圧縮の効率が低下してしまいます。それを避けるため、コンプレッサーとエンジンの吸気側の間に熱交換器を設けて、圧縮した空気を冷やしてやります。この熱交換器をインタークーラーと呼びます。

 1980年代には世界的な過給エンジンブームが起こりましたが、その後、1990年代末ごろから、排気ガス規制の強化や省燃費要求といった面で、過給ガソリンエンジンは徐々に姿を消していきます。
 ガソリンエンジンの場合、圧縮比をある程度以上に高めると、点火プラグで着火する前に燃焼が始まってしまう「異常燃焼」によってエンジンがダメージを受けてしまいます。あらかじめ圧縮した空気をシリンダーに送り込む過給エンジンで異常燃焼を起こさないためには、エンジン本体側の圧縮比を低く設定しておかなくてはならなかったり、シリンダー内部の温度を下げるため、多めに燃料を送り込んで気化潜熱で冷却する必要があったことなどが、その理由です。

 一方で、ディーゼルエンジンでは過給が不可欠な要素となっていきました。エンジンに空気だけを吸い込んで、圧縮してから燃料を噴射するディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンのような異常燃焼の恐れがないため、過給との相性が非常に良好なのです。過給ディーゼルエンジンは、小排気量で高出力を得られ、エンジン自体のサイズや重量も低く抑えられ、また排気ガス中の有害成分低減の面でも効能があるという、願ったりかなったりの効果を発揮します。

 最近では、ガソリンエンジンでもディーゼルエンジンのように燃料を直接シリンダー内部に噴射する「直噴」が増えつつあります。このタイプのガソリンエンジンは過給との相性が良く、エンジン本体の圧縮比も高く保っておけるなどのメリットが多く、今後のダウンサイジングにおいて重要な技術のひとつと見られています。

 ちなみに、ターボは排気ガスのエネルギーという、従来はただ捨てていたものを利用して効率を高めます。この「エネルギー回収」によって効率を高める点も、制動時の運動エネルギーを利用して発電し、モーターの駆動に利用するハイブリッド車と同じなのです。

ターボラグとそのソリューション紹介
 さて、今も昔もターボの最大の弱点とされているのが「応答遅れ」、通称「ターボラグ」の問題です。
 排気ガスの流量が増えて運動エネルギーが増加しても、重さのあるタービンの回転数はすぐには上昇しないので、過給圧も遅れて立ち上がることになります。圧縮比の低い過給エンジンは、過給圧が高まるまでは「排気量の割にトルクが小さいエンジン」ですから、クルマは思ったように加速してくれません。これがターボラグと呼ばれる現象です。

 ターボラグを解消するには、タービン/コンプレッサーホイールと、それをつなぐシャフトを軽量化するのが本道ですが、限界もあります。そこで、排気ガスの流量が少ない状態では、その圧力もしくは流速を高めてやることで、ターボラグを解消しよう、という発想が生まれます。
 さまざまな方式が考案されましたが、メジャーなのは排気ガスをタービンへ吹き付けるノズル部分の面積を可変とする機構です。簡単に言うと、水道につないだホースの先端を指で絞ってやることで、少ない量の水でも勢いよく、もしくは遠くまで飛ばせる、あの理屈を応用するわけです。

 その中でも採用例が多いのが、「可変ジオメトリーターボ」と呼ばれるタイプです。タービンへ排気ガスを吹き込むノズル部分に、電動モーターなどで作動する複数の可動ベーン(案内翼)を配置しているのが特徴です。排気ガスの流量が少ない状態では、ベーン間の隙間を絞って流速を高めます。エンジン回転が高まり、排気ガスの流量が増えてきたら、それに応じてベーン開度を調整して過給圧を制御する、という仕組みです。

可動ベーンは、スクロール部分からのノズルを絞る位置と角度に固定される。ノズルの隙間が狭まることで、その間を通り抜ける排気ガスの流速が高まり、運動エネルギーを高めた状態で勢いよくタービンに吹き付けられ、短時間でタービンの回転を高められる。

エンジンの回転数が高まり、排気流量が増えてきた状態では、可動ベーンはノズル隙間を拡げる位置と方向に動く。この状態で、各ベーンの位置と形状がタービンの羽根に効率良く排気ガスを吹き付けられるような設計とすることが重要となる。

 過給圧の立ち上がりが早いことに加え、特にディーゼルエンジンではターボラグ状態での酸素量不足による有害物質の発生を抑制する効能もあるため、もはや完全に主流の座についていると言っても過言ではありません。
 最近では、コンプレッサーホイール側にも可変ノズルを備えるターボも開発されています。両方のノズル開度を調整することで、いっそうきめ細かい制御が可能となるわけです。

 また、ダウンサイジング用ターボでは、排気ガスの流量が少ないうちから有効な過給圧を発生するため、羽根車の径を小さく設定しておくのがセオリーとなっています。小径の羽根車は、エンジン回転数がそれほど高くならないところで能力の限界に達してしまうので、あまり大きな過給圧力を発生させられません。しかし、ダウンサイジングエンジンでは実用域のトルクを確保することが目的なので、むしろ小径化によってターボラグが低減できるメリットを優先することが理由です。
 車種によっては、エンジン回転数2000rpm程度で最大トルクを発生するような設定としているものもあります。こうすることで、実用域のトルクを確保しながらターボラグも低減でき、「燃費向上のためのターボ」が実現するわけです。


著者プロフィール:松田勇治(マツダユウジ)
1964年東京都出身。青山学院大学法学部卒業。在学中よりフリーランスライター/エディターとして活動。
卒業後、雑誌編集部勤務を経て独立。
現在はMotorFan illustrated誌、日経トレンディネットなどに執筆。
著書/共著書/編集協力書
「手にとるようにWindows用語がわかる本」「手にとるようにパソコン用語がわかる本 2004年版」(かんき出版)
「記録型DVD完全マスター2003」「買う!録る!楽しむ!HDD&DVDレコーダー」「PC自作の鉄則!2005」(日経BP社)
「図解雑学・量子コンピュータ」(ナツメ社)など


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