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 トップページテクの雑学 > 第29回 足して合わせて、整えて…… −日本標準時の作られ方−
テクの雑学

足して合わせて、整えて…… −日本標準時の作られ方−

 私たちは、「1日=24時間」をあたりまえの約束事として、標準時を元にして日常生活を営んでいます。しかし、その標準時の決め方はちょっと複雑です。今回の「テクの雑学」では、私たちの生活とは切り離せない「時間」の定義についてみてみましょう。

歴史にみる「1秒」の長さの変遷
 私たちの生活は、太陽の出没のリズムが基本になっています。太陽の動きを使って時間を計る最も簡単な装置が日時計です。紀元前4000年ごろの古代エジプトでは、時間を計る道具として、日時計が使われていたという記録があります。日時計を使うと、1日の長さを「太陽が南中してから次に南中するまでの時間」として定義することができます。これを「視太陽日」といいます。エジプトでは、視太陽日を24等分して1時間を定義し、利用していました。

 さらに細かく、1時間を60分、1分を60秒に分割したのは紀元前1900年ごろにさかえた古代バビロニア文明です。バビロニアの数学は、両手の指の数である10、1年間の満月の回数である12、両手両足の指の数の合計である20を基準とした60進法が使われていたため、分・秒の単位も60を基準としたようです。

 ところで、視太陽日の長さは一定ではなく、夏と冬で約1分ほど違ってしまいます。理由は2つあります。1つ目の理由は、地球が太陽の周りをまわる軌道が楕円形であり、早さが一定ではないからです。もう1つの理由は、地球の自転軸と公転面が垂直ではなく傾いて交差しているため、太陽は天の赤道上ではなく少しずれた黄道上を移動するからです。

 これでは不便なので、18世紀末のヨーロッパで、1年間の視太陽日の長さを平均した長さを「平均太陽日」として定義し、1平均太陽日を24等分した時間を「1平均太陽時」とする時間の定義が広がりました。1平均太陽時の3600分の1が1秒というわけです。

 平均太陽時の考え方は、地球の自転速度が一定であるという仮定のもとで成り立ちます。しかし実際には、地球の自転周期は一定ではありません。月による潮汐で地球の自転速度にゆらぎが生じており、しかもだんだんと遅くなっているのです。そこで、1956年、地球の公転周期を元にした1秒の定義として、「秒は、暦表示の1900年1月0日12時に対する太陽年の1/31,556,925.9747倍である」と定められ、1960年の第11回国際度量衡総会で正式に採用されました。

 やがて、原子時計の開発により、観測によってしか決定できない地球の公転よりも、原子時計を秒の定義に使うことが決定されました。実際に原子時計による1秒の定義が決定されたのは、1967年の第13回国際度量衡総会です。

原子時計の仕組み

 現在の1秒の定義は、「セシウム133 原子の基底状態の2つの超微細準位間の遷移に対応する放射の9,192,631,770 周期の継続時間」となっています。原子は、エネルギー状態が変化するときに、原子の種類によって定まる周波数の電磁波を放出します。この電磁波の放出を検出して、その回数によって1秒を計ります。
時刻の定義は3つある
 時刻の定義も、元々は、時間と同様、太陽の運行すなわち地球の自転・公転周期を元にさだめていました。イギリスのグリニッジ天文台を通る子午線上で太陽が南中する時刻を正午としてして定めた時刻を「世界時(グリニッジ標準時)」といいます。世界時は、1秒は平均太陽時を元にして刻まれる時系です。

 ところが、1967年の1秒の定義の変更に伴い、時刻も原子時計で定められるようになりました。1958年1月1日0時において、世界時と原点を一致させ、原子時計で刻まれた秒数に基づき時刻を定めます。実際には、原子時計の設置場所や環境によって、時計ごとに微妙に測定される1秒の長さは異なるので、世界中に設置された100以上の原子時計の時刻をフランスにある国際度量衡局(BIPM)で過重平均することにより定義されています。これを「国際原子時」といいます。

 世界時と国際原子時では、1秒の長さは違っています。そして、国際的な秒の定義は国際原子時にあわせられています。つまり、これをそのまま放置していると、時計で表示される時刻と太陽の動きがどんどんかけ離れていってしまいます。時計は正午をさしているのに、太陽はまだ上ったばかり、なんてことになったら不便ですよね。日常生活には、自然のリズムにしたがっている世界時のほうが適しているのです。

 そこで、1972年、「1秒の長さには原子時の1秒を使いながら、時刻はできるだけ世界時からずれないように調整する」という考え方で時刻を定義する考え方が採用されました。これを「協定世界時」といいます。現在の世界標準時刻は、「協定世界時」に準拠して定められているのです。協定世界時を世界時にあわせるための調整には、協定世界時に1秒を挿入・削除する「うるう秒」を使い、世界時と協定世界時の差が0.9秒以上にならないように調整しています。前回うるう秒が実施されたのは1999年1月1日(1秒挿入)、次回のうるう秒実施は2006年1月1日(1秒挿入)の予定です。

日本標準時を作る12の原子時計
 最初に日本標準時が定められたのは、1886年7月12日です。グリニッジ標準時を基準に、東経135度の時刻すなわち+9時間として定められました。

 その後、1895年12月27日、東経120度の時刻を「西部標準時」として八重山列島、宮古列島、当時日本統治下だった台湾・澎湖列島で使用することが定められ、同時に従来の東経135度の時刻は「中央標準時」と定められました。日本国内でも時差がある時代があったのです。西部標準時は1937年9月24日に廃止されましたが、中央標準時という呼称はそのまま残りました。現在でも、日本標準時は、法律的には「中央標準時」と呼ぶのが正しいのです(この原稿では、なじみのある「日本標準時」という呼称を使っています)。

日本標準時が生成されるまで

 現在の日本標準時には、協定世界時を基準にした日本標準時を採用しています。12台の原子時計が、情報通信研究機構の日本標準時グループにより運用されており、その時計の時刻1を1日1回平均することで、協定世界時を生成しています。これを9時間すすめたものが、日本標準時になります。

 日本で生成された協定世界時は、定期的にフランスにある国際度量衡局(BIPM)に送信されます。世界各国からあつめられた協定世界時を過重平均することで、協定世界時が最終決定されます。日本で生成した協定世界時と、国際度量衡局が決定した協定世界時の差がプラスマイナス50ナノ秒以上にならないように、日本の原子時計は管理されています。

日本標準時を配信する仕組み
 日本標準時は、標準電波(JJY)で日本全国に送信されています。放送局や117の時報サービスの元になる親時計は、この標準電波の受信により、日本標準時に時刻をあわせています。現在、日本で標準電波を発信しているのは、福島県にある「おおたかどや山標準電波送信所(40kHz)」と、佐賀県と福岡県の県境にある「はがね山標準電波送信所(60kHz)」の2つです。

 標準電波には、時・分・日付(1月1日からの通算日時)・年(西暦下2桁)・曜日などの時刻コードが含まれています。標準電波を受信して自動的に時刻をあわせるのが、電波時計です。電波時計は使用する場所や設置する方角によって、40kHzと60kHzの2つの標準電波のどちらかしか受信できなかったり、電波の受信がしにくい場合があります。電波時計の購入時にはよく注意しましょう。

日本標準時を配信する仕組み

 また、コンピューター用には、原子時計から日本標準時を生成するワークステーションに直接接続した「NTPサーバー」を使って、公共機関や各インターネットプロバイダーに正確な時刻を配信しています。

関連情報リンク
日本標準時を表示するページ(独立法人 情報通信研究機構)
*Java scriptにて時刻を表示する為、使用ブラウザはインターネットエクスプローラーVer4.0以上、または、ネットスケープVer4.0以上を推奨。正常に動作しない場合、再読込してください。(試験運用中だそうです)

 インターネットプロバイダーの相互接続を提供するインターネットマルチフィードでは、誰でもインターネット経由で使えるNTPサーバーを提供しています(下記リンク参照)。このNTPサーバーを利用することで、自分のパソコンの時刻を常に日本標準時に合わせておくことができます。

関連情報リンク
時刻情報提供サービス for Pub(インターネットマルチフィード株式会社)


著者プロフィール:板垣 朝子(イタガキアサコ)
1966年大阪府出身。京都大学理学部卒業。独立系SIベンダーに6年間勤務の後、フリーランス。インターネットを中心としたIT系を専門分野として、執筆・Webプロデュース・コンサルティングなどを手がける
著書/共著書
「WindowsとMacintoshを一緒に使う本」 「HTMLレイアウトスタイル辞典」(ともに秀和システム)
「誰でも成功するインターネット導入法—今から始める企業のためのITソリューション20事例 」(リックテレコム)など


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