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 トップページテクの雑学 > 第13回 小さく分けて送ると、安くなる? 〜簡単にわかるIP電話のしくみ
テクの雑学

小さく分けて送ると、安くなる? 〜簡単にわかるIP電話のしくみ

 今年もいよいよ終わります。年末といえば、年末年始の旅先や帰省の相談など、長距離電話をかける機会が増える機会です。「長距離電話は、通話料が高い」のは昔の話。安く長距離電話がかけられる「IP電話」サービスが注目されています。今回の「テクの雑学」では、IP電話の仕組みについてご紹介しましょう。

 IP電話が安いのは、通話に「インターネット」を使っているからです。例としてAさんからBさんに電話をかける場合を考えてみましょう。

 一般の電話を使う場合、Aさんの電話機はAさんの最寄の電話局に、Bさんの電話機はBさんの最寄の電話局にそれぞれ接続されています。Aさんの最寄の電話局とBさんの最寄の電話局の間は、公衆電話網を利用して接続されています。公衆電話網の利用料金は、距離が長くなれば高くなります。

 では、AさんがIP電話を使って電話をかける場合を考えましょう。IP電話は、インターネットに直接接続されています。BさんもIP電話を使っている場合なら、通話はインターネットを通してのみ行われます。つまり、ADSLなどの常時接続を使っていれば、別途電話回線使用料が発生することはないのです。実際、「同じプロバイダーのIP電話同士なら通話料は無料」というサービスも数多くあります。

 また、Bさんが一般の電話を使っている場合も、Bさんの最寄の電話局まではインターネットで通信し、一般の電話回線を使うのは、Bさん最寄の電話局からBさんの電話機までの間の市内通話だけになります。そのため、やはり、一般電話同士の場合よりも、格段に安く長距離電話がかけられるのです。

IP電話のつながる仕組み IP電話のつながる仕組み

 IP電話は、インターネットの常時接続が家庭に普及するにつれ、注目されるようになってきたサービスです。あたりまえのことですが、電話は、発信だけでなく着信が常時できなくては実用になりません。ADSLやケーブルテレビによるインターネットに常時接続が安く実現可能になったので、IP電話を一般の電話と同じように発着信の両方に使うことが現実的になったのです。2002年11月からは、050ではじまる電話番号をIP電話に割り当てることで、緊急通報やフリーダイヤルなどの一部のサービスが利用できない以外は、一般の電話とほぼ同じように発着信に使えるサービスがはじまっています。

 インターネット経由で音声をやりとりするためには、通常の電話の信号を「パケット」という形にする必要があります。パケット化の手順についてみてみましょう。

 通常の電話で送受信している信号は、音声をそのまま電気信号に変換したアナログ信号です。大雑把にいうと、アナログ信号は、その振幅で音の大きさ、その波長で音の高さをあらわしています。これを、PCM(Pulse Code Modulation)という方式で1と0を使ったデータに変換します。これが「デジタル化」です。

 次に、デジタル化した音声信号を、20ms(ミリ秒・1msは1000分の1秒)程度の長さに小さく分割します。分割したデータの断片に、送信されているパケットの総数やそのパケットの順序をあらわす「RTSヘッダー」、このパケットがIP電話のデータであることをあらわす「UDPヘッダー」、パケットの送信元と送信先をあらわす「IPヘッダー」の情報を付加します。この処理が「パケット化」です。この、小分けにされたデータを「パケット」といいます。

音声のIPパケット化の仕組み

 受信側では、受信したパケットを繋ぎ合わせ、再度アナログ信号に変換することで、音声信号を聞くことが出来ます。

 PCMの技術は、一般電話回線や携帯電話でも広く使われています。データをデジタル化することで、音質の劣化が起こりにくいというメリットがあるからです。

 しかし、IP電話は、一般の電話に比べて、音質が劣っていたり、音声の遅延が起こりやすいといわれています。デジタル化されているのになぜそのようなトラブルが発生するのでしょうか。

 いくつかの理由はありますが、最大の理由は、IP電話が、データの送受信にインターネットを利用していることからきています。電話回線網では、常にネットワークの通信品質や通信速度は一定の品質を保証されていますが、インターネットは、ネットワーク上を流れるデータの量や通信経路上にあるさまざまな機器の性能によって、通信速度が変動する、「ベストエフォート型」と呼ばれるネットワークです。インターネットを経由してデータを送受信しているので、経路の途中でネットワークが混雑しているところがあれば、音声のパケットも到達が遅れたり、最悪の場合は一部が欠落することもあります。

 パケットの到達が遅れることで、発信側で話す時刻と受信側で聞こえる時刻に数秒以上の遅れや音とびが出たり、エコー(電話線を使って音声を送信するときに発生する音声の微妙な遅延)が会話の妨げになるほどひどくなったりといった現象が起こります。IP電話の音質向上のために、エコーを打ち消す「エコーキャンセラー」や、発信側と受信側の音声のずれを減らすためのネットワーク設計や音とびを防ぐためのネットワークゆらぎバッファの設定、パケットロス補償などの技術が研究がされており、音質は飛躍的に向上しつつあります。

 総務庁では、固定電話並の音質や固定電話から置き換える場合の緊急通報(110、119)への対応など、一定の基準を満たせば、IP電話にも従来のNTTの固定電話で使用していた0AB〜J方式(市外局番−市内局番−番号)の電話番号を割り当てることを認めています。光ファイバーや専用線を使って、0AB〜J方式のIP電話サービスを開始するプロバイダーもいくつか出てきています。

 0AB〜J方式なら、従来の固定電話を完全にIP電話に置き換えることも可能になります。2004年9月には、NTT東日本・西日本が、自社のサービスとして、集合住宅向けに0AB〜J方式のIP電話のサービスを開始しました。IP電話技術の発展により、電話の通話料の低価格化にも拍車がかかりそうです。


著者プロフィール:板垣 朝子(イタガキアサコ)
1966年大阪府出身。京都大学理学部卒業。独立系SIベンダーに6年間勤務の後、フリーランス。インターネットを中心としたIT系を専門分野として、執筆・Webプロデュース・コンサルティングなどを手がける
著書/共著書
「WindowsとMacintoshを一緒に使う本」 「HTMLレイアウトスタイル辞典」(ともに秀和システム)
「誰でも成功するインターネット導入法—今から始める企業のためのITソリューション20事例 」(リックテレコム)など


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