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 トップページテクの雑学 > 第6回 精緻なる現代の“ぱらぱらマンガ” −デジタル放送のからくり−
テクの雑学

精緻なる現代の“ぱらぱらマンガ” −デジタル放送のからくり−

 連日の熱戦に加えて、日本選手のメダルラッシュでおおいに盛り上がったアテネオリンピックも無事に幕を下ろしました。ついつい真夜中までテレビに釘づけになってしまって、寝不足の日々を過ごした方も多いのではないでしょうか。
 オリンピック開催前には、薄型・大画面でデジタル放送対応のテレビ受像機の売れ行きが絶好調だったと聞きます。きっとみなさんの中にも、日本選手の活躍をデジタル放送ならではのHD(High Definition)画質で楽しんだ方がいらっしゃることと思います。
 しかし、考えてみると不思議ではありませんか? 映像が電波に乗って飛んでくる仕組みはどうなっているのでしょう? また、アナログ放送とデジタル放送の違いはどこにあるのでしょうか?

 まず、あらゆる「動画」の基本になっているのは、「ぱらぱらマンガ」や映画のフィルムのように、「少しずつ変化している」複数の静止画を「連続して」見せてゆくことです。この原理は、アナログ動画でもデジタル動画でもまったく同じ。人間の眼に静止画(1)の「残像」が残っている間に、そこから少しだけ変わっている次の静止画(2)、また少し変わっている静止画(3)…と次々に見せてゆくことで、動画として認識されるわけです。ちなみに、映画の場合は1秒間に24枚(フィルムなので「コマ」と呼びます)、テレビ放送の場合は約30枚(同じく「フレーム」と呼びます)の静止画を表示しています。

■ディスプレイ (走査)  display (scan) ■ ※この図版はJavaアプレットです。ブラウザの【ツール】→【インターネットオプション】→【詳細設定】→【Java】欄のチェックが外れていると可動しません。
▼CRT (cathode ray tube) ディスプレイの画面を表現している画面の青い部分が、スタート後に瞬間的に光ります。これが輝点 (spot) です。

▼この輝点が水平に動きながら線を描き、順次垂直に動くことで画面を表示することを走査 (scan) といいます。

▼実際の輝点は、秒速20km程度の猛速で水平移動(厳密には、輝線一本分の高さだけ右下がり)します。この際、ディスプレイの残像効果により、瞬間的に線が表示されたように見えることを輝線、もしくは走査線 (scanning line) といいます。

▼輝点が画面を左右に横切り、端まで行き着くと段を下げ、再び走査線を表示します。この動きの連続で画面全体に走査線が表示されると、残像効果により、瞬間的に面が表示されたように見えます。 さらに、輝点の明るさ・色が任意に変化すると、文字や絵が表示された様に見えます。
ボタンの説明
*【 RUN 】ボタンをクリックすると輝点が動き始めます(CRTディスプレイの走査の様子を表現します)。
 画面の下の黒いバーには、輝点が表示すべき走査線を表現します。
 輝点の高さに応じ、表示すべき走査線のデータが順次変化します。
Special Thanks
  『Javaアプレット:情報処理概論(関西外国語大学/上山清二様)ご提供』
   http://www.infonet.co.jp/ueyama/ip/hardware/scan.html
   http://www.infonet.co.jp/ueyama/ip/resume.html

 映画の場合は、動画を作り出すための静止画が、再生する順番に1本のフィルム上にまとめられていますから、専用の映写機にかけることで動画が再生できます。しかし、テレビの場合は、動画を電波に乗せるための仕組みが必要になります。そこで考案されたのが、動画情報を「信号」に変換する方法です。
 テレビは映画と違い、画面を表示するために「走査(Scan)」という仕組みを使っています。画面の左から右へ、そして上から下へ、徐々に画像を表示して行くことです。日本で使われているテレビの規格「NTSC」では、1画面を525本の横方向のライン=走査線で表示します。また、すべての走査線を同時に使うのではなく、まず走査線の偶数番のラインだけ(偶数フィールド)を使い、2、4、6……500本め……というように表示し終わったら、次は奇数番のラインだけ(奇数フィールド)を使って1、3、5……499本め……というように、交互に表示しています。この「インターレース」と呼ばれる技法を使うことで、一度に送受信する信号の情報量を節約しつつ、滑らかな動画を実現しているのです。
 この「走査」こそが、動画→信号変換の上のポイントです。1枚の静止画は、まず1本1本の走査線の単位に分けられます。次に、走査線を横方向にどんどん細かく分割していくと、最終的には「色付きの点」に追い込めます。そして、すべての色は光の3原色であるRGB(赤、緑、青)を混ぜ合わせることで作れますから、1本の走査線は「色R4G1B8/色R7G3B0/色R9G5B8…」といった具合に、色付きの点がずらーっと並んでいるものと考えていいわけです。
 こうなると、その情報を「信号」として表現するためのルールも見えてきます。信号の最小単位は、RGBそれぞれの濃度と、輝度(明るさ。記号では「Y」で表す)を表すもので済みますよね。1本めの走査線を構成する「色点」の情報を左から右へ順番に並べ、次に3本目の走査線の…という「信号」を作り、それを電波に乗せて送受信する仕組みと組み合わせる。これが、テレビで動画が見られる基本の仕組みです。
 ちなみに、この信号を磁気記録材料などに記録/再生できるようにしたものがVTR(ビデオテープレコーダー)、というわけです。

 さて、ご存じのように、今でも地上波はアナログ波による放送が主流になっています。アナログ放送では、動画用の信号をアナログ(連続量)によって表現しています。アナログ信号は外的な要因の影響を受けやすく、また信号を構成する情報の欠損をリカバーすることができません。VTRで考えてみるとわかりやすいと思いますが、何かのトラブルでテープにシワが寄ってしまったりすると、その部分に記録されている画像にはノイズが乗ったり、色合いがヘンになったりします。画面を構成する「点」の色情報と輝度情報が正確に読み取れず、例えば本来は「R5G9B1Y7」という色点情報だったものが「R5G0B0Y7」のように誤って伝わってしまうために起こる事態です。電波で送受信する場合も同じで、正しい情報を、適正な電波の強さで、しかも安定して連続的に送受信できないと、正しい映像は再生できなくなってしまうのです。

 そこで信号をデジタル(離散数)化する手法が考案されました。信号に含まれる映像用のデータは0と1だけ。多少ノイズが混じったとしても、0と1だけ正しく判断できれば、完全に元通りの映像が再現できます。画像の例でいえば、アナログ信号にありがちなノイズや色ボケといった問題は起きない、ということになります。
 その代わり、いったん信号の内容がリカバリー不可能な状態になってしまうと、まったく画像として成立しない、ということになりかねません。しかし、現行のデジタルテレビ放送にはたいへん強力なエラー訂正の仕組みが組み込まれているので、ほとんど心配する必要はありません。また、1本の走査線を構成するための情報量をアナログ放送とは段違いに増やす技法を使ったHD画質や、奇数行→偶数行→奇数行と順番に表示する「プログレッシブ走査」、さらに情報を「圧縮」することで生まれる電波帯域の余裕を活用した文字放送など、アナログ放送にはなかった様々な仕組みも盛り込まれています。

 特に地上波では、まだデジタル放送を受信できるエリアに制限があり、地上デジタル放送の電波を受信できるチューナーもまだ気軽に購入できる価格帯とはいえませんが、いずれも時間が解決するだろう問題です。ノイズがなく、鮮やかな色合いの、そしてアナログ信号よりも圧倒的に情報量の多い=高画質なデジタル放送の映像を、誰もが手軽に楽しめる日も、そう遠くはないことでしょう。


著者プロフィール:松田勇治(マツダユウジ)
1964年東京都出身。青山学院大学法学部私法学科卒業。
在学中よりフリーランスライター/エディターとして活動。
卒業後、雑誌編集部勤務を経て独立。現在は日経WinPC誌、日経クリック誌などに執筆。
著書/共著書/監修書
「手にとるようにWindows用語がわかる本」(かんき出版)
「手にとるようにパソコン用語がわかる本 2004年版」(かんき出版)
「PC自作の鉄則!2003」「記録型DVD完全マスター2003」「買う!録る!楽しむ!HDD&DVDレコーダー」など(いずれも日経BP社)


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