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6th Floor スティックひとつでクルマを操作
− バイ・ワイヤー技術の先進性 −
 パドル・シフト=シフト・バイ・ワイヤーは、これだけの作業を瞬時に行なってしまうのです。変速操作に要する時間が短縮できる=クラッチを切っている時間が短縮できるので、駆動力を路面に伝えられる時間が増やせること、変速操作の確実性が高まることによるトラブルの低減、ステアリングホイールから手を離さずに変速操作ができることによるドライビングの自由度向上などなど、シフト・バイ・ワイヤーがもたらしたメリットはたいへん大きなものがあり、翌シーズンにはライバルチームもこぞって同様の仕組みを搭載してきました。さらに数年後には、サーキット形状などのデータやGPSと連動し、パドルの操作さえ不要とした「プログラムシフト/フルオートマ」へと進化します。

スロットル・バイ・ワイヤーとは?
スロットル・バイ・ワイヤーのメリットは、操縦性安定性の向上もそのひとつに挙げられる。雨天時などの路面状況をタイヤのスリップで感じ取り、晴天時と違うスロットル開閉モードに自動調整することなどが可能となる。

 パドル・シフトの次にF1マシンに用いられたバイ・ワイヤー機構は、アクセルペダルとスロットル制御の系統です。こちらは1990年代の初頭に採用例が登場しました。従来、ケーブルやリンケージなどの機構で接続されていたペダルとスロットルバルブの間を、バイ・ワイヤー化したのです。
 こうすることで、まずスロットルケーブルやリンケージの破損といったトラブルを根絶できます。また、ペダルの踏み込み量とスロットルバルブ開度の関係を自在に設定し、しかもあらかじめ複数のモードを用意しておいて瞬時に切り替えることも可能になりますから、エンジンや路面のコンディションに応じて比率を調整したり、トラクション・コントロール機構と緻密に連携させる、といったことが可能になりました。

20年以上前から市販車にも採用済みの技術
 話を市販車に移しましょう。実は、F1マシンにさきがけて完全な電子制御による「ロボット・シフト」機構を搭載した市販車がありました。1983年、いすゞASKAに搭載された「NAVI5」がそれです。NAVI5は従来通りのシフトレバーを使いますが、それ以外の仕組みは後にF1で採用されたものと基本的に同じです。それどころか、エンジンやブレーキなどとも連動する、当時としては画期的な統合電子制御システムでした。しかし時代が早すぎたのか、一部に熱狂的なファンを持ちつつも、登場から2年ほどでカタログから消えてしまった悲運のメカニズムです。
 一般的にバイ・ワイヤー機構の認知が高まるのは、90年代の半ば頃です。ドイツのカスタムカー・ビルダーなどが、シフト・バイ・ワイヤー的な機構を採用し始めたことでクルマ好きの話題を呼びました。
 ただし、当時のものはNAVI5やF1マシンのパドル・シフトほど複雑な機構ではなく、シフトレバーにセンサーを装着し、一定以上の力が加わると自動的にクラッチを切り、変速し終わるとクラッチをつなぐだけの比較的単純な機構でしたから、正しくは「クラッチ・バイ・ワイヤー」と呼ぶべきものかもしれません。しかし、クラッチ操作という、運転に習熟していない層にとってはかなり難易度の高い操作を不要とした効能は大きく、数年後にはルノーがコンパクトクラスの市販車に採用するなど、着実に採用例を増やしてゆきました。

By Wire化によるメリット
車体設計の自由度向上 従来、各種のシャフトなどが占拠していたスペースが不要になるため、その分を室内スペースの拡大や、衝突時の安全性向上のために使うことができる。
軽量化 シャフトやギアなど、金属製の大きく重いパーツを使わなくて済むようになるため、車体の軽量化が実現。燃費性能や衝突安全性の向上に貢献できる。
セットアップの自由度の向上 機械的な構造の工夫に代わり、機構部の動作を電子制御するため、セットアップの自由度が飛躍的に高まる。
安全性の向上 一次的には、セットアップの自由度が高まることと、ドライバーアシスト機構との連携などによる安全性向上が見込まれる。二次的には、操作系統を多重化することなどで、主系統が故障した場合でも副系統に切り替える、といった形で安全性を高めることも可能になる。
コスト削減 シャフトやギアなど、金属製の大物パーツは、生産設備の規模がそれなりに大きくなりがち。これをセンサー、ハーネス、モーターといった汎用性の高い部品に置き換えることで、場合によっては製造コストを低減できる余地がある。

 さて、市販車のバイ・ワイヤー化によって得られるおもなメリットを、表にまとめてみました。90年代のバイ・ワイヤー化は、どちらかというと「F1マシンのテクノロジー」といったイメージ先行な存在だったのですが、昨今実現しつつあるバイ・ワイヤー化への流れは、クルマそのものの構造やカタチ自体を変えてしまう可能性を持つ、大きなムーブメントなのです。
 たとえば、ステアリング・バイ・ワイヤー化によって、従来はシャフトとギアボックスが占めていたスペースが不要になりますから、そこに衝突安全のための機構を組み込んだり、室内スペースを拡大することができます。デザイン上の自由度も大きく高まるでしょう。ステアリングのパワーアシストの設定も完全にプログラマブルにできますから、その自由度は飛躍的に高まります。
 軽量化できるメリットも実利の大きいものです。各種のシャフトやギアボックスは金属製の重いパーツですから、これがなくなるだけで車体の大幅な軽量化が実現でき、燃費や衝突安全性を高めることができます。他にも考えられる変更点は枚挙にいとまがないほどで、ある意味、銀塩カメラがデジタルカメラに移行した際と同じような「アーキテクチャー全体のリセット」が再現されるかもしれません。

ステアリング・バイ・ワイヤーとは?
ステアリング・バイ・ワイヤーのメリットは、車体のフロントセクションの構造の自由度が飛躍的に高まること。操舵力、操舵量とフロントタイヤの動きの関係も、任意に、きめ細かく設定できる。

運転弱者の味方となるバイ・ワイヤー化
 また、バイ・ワイヤー化は、身体に障碍を持つ方々へもたらす恩恵も大きいはずです。自動車はある意味で「モビルスーツ」としての側面も持っています。所有することで実現する「自由な移動」のメリットは、身体に障碍を持つ人にこそ大きいのです。しかし、障碍の内容によっては、通常の操作系を使って運転することが困難なこともままあります。
 それをフォローするため、現在も後付けの運転補助装置が多々市販されています。それらの完成度も日々高まってはいますが、いかんせん「本来の操作系に付け加えるもの」としての限界があることは否定できません。また、コスト的にも補助装置の分、上乗せが必要になるわけです。しかし、たとえばステアリング・バイ・ワイヤー機能とスロットル・バイ・ワイヤー機能を併せ持つジョイスティック型の操作系が標準装備になれば、追加コストは不要になりますね。また、運転装置自体のデザイン自由度も大きく高まりますから、現状では運転が不可能なケースでもフォローできるような仕組みが実現できる可能性もあります。
 このように、21世紀の自動車業界にとって、適材適所なバイ・ワイヤー化と、新しいデザインの模索は、最重要のテーマとなっているのです。

 ちなみに、航空機の世界では昨今「フライ・バイ・ライト(Fly by light)」という言葉が使われ始めています。操作機構の動きと、機体全体の動きをセンサーでモニターしてコンピュータで統合的に処理し、フラップなどの動きを制御する機構ですが、センサーに光学系のものを使い、各セクションの間を接続する経路も光ファイバー・ケーブルを使うために「バイ・ライト」と呼ばれています。バイ・ワイヤーの進化版、光学版と言えるものですが、光信号を使うためノイズに強く、高速大容量のデータ通信が可能で、さらなる省スペース化と軽量化が実現できるといったメリットがあります。
 ひょっとすると、バイ・ライト化に関しては、航空機よりも自動車が先行するかもしれません。すでに自動車には多くの光学センサーが搭載され、通信ケーブルの光ファイバー化も実用化されつつあるからです。

著者プロフィール:松田勇治(マツダユウジ)
1964年東京都出身。青山学院大学法学部卒業。在学中よりフリーランスライター/エディターとして活動。
卒業後、雑誌編集部勤務を経て独立。現在は日経WinPC誌、日経ベストPCデジタル誌などに執筆。
著書/共著書/監修書
「手にとるようにWindows用語がわかる本」「手にとるようにパソコン用語がわかる本 2004年版」(かんき出版)
PC自作の鉄則!2005」「記録型DVD完全マスター2003」「買う!録る!楽しむ!HDD&DVDレコーダー」など(いずれも日経BP社)
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