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第122回「放射線療法と磁石」の巻
-宇宙開発や重粒子線がん治療装置にも磁石が活躍- |
磁石とマイクロ波によるECR(電子サイクロトロン共鳴)
“はやぶさ”に搭載されたイオンエンジンは、マイクロ波放電式イオンエンジンと呼ばれるタイプです。空間を運動する電子は電流と同じものとみなすことができます(ただし電子の運動方向は電流の向きと逆)。このため、磁界方向に垂直に運動する電子には、フレミングの左手の法則により、磁界方向と電子の運動方向の双方に垂直な方向にローレンツ力が加わります。一様な磁界の中で運動する電子には、このローレンツ力がたえず作用します。またこのため、電子は回転運動を続け、一様な磁界に対して斜めに進入する電子は、磁力線に巻きつくようならせん運動をします。これをサイクロトロン運動といいます(サイクロトロンとは電磁石の磁界と高周波電場によってイオンを渦巻き状に加速していく加速器のこと)。
サイクロトロン運動する電子に対して、回転周期と同じ周波数のマイクロ波を加えると、電子はマイクロ波の電界によりエネルギーを得て加熱され、ついには共鳴を起こしてエネルギーが飛躍的に増大します。この現象をECR(電子サイクロトロン共鳴)といいます。
マイクロ波放電式イオンエンジンは、このECR現象によって、マイクロ波のエネルギーを電子の運動エネルギーに変換する方式です。イオンエンジンの推進剤としてはキセノンなどが用いられ、電子は種火のような役割をします。
ECRによって加熱された電子が推進剤であるキセノン原子に頻繁に衝突すると、キセノン原子はイオン化し、高密度のプラズマが生成されます。キセノンイオンは正の電荷をもつため、エンジン後部に負電荷の加速グリッドを設けると、電気的な力によって引きつけられ高速で噴出します。マイクロ波放電式イオンエンジンは、このときの反動を推力として利用します。
しかし、正電荷のキセノンイオンを噴出し続けると、エンジン全体はどんどん負に帯電してしまいます。そこで噴射口後方に中和器を設け、そこから負電荷の電子を放出してキセノンイオンおよびエンジン全体を電気的に中和しながら推進するしくみになっています。

図1 永久磁石を利用したマイクロ波イオンエンジン
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