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Updated Apr.10,2005
Adventure into The Material World Part1 No.33
“メタリック”のサイエンス
モルフォチョウ
▲金属光沢に似た美しい翅を持つモルフォチョウ。

■■ 金属光沢をもつ生物 ■■
 生物なのに金属のような光沢をもつものがいます。たとえばアマゾンに生息するモルフォチョウは、メタリックなコバルトブルーの翅(はね)をもつ美しい蝶として知られます。蝶や蛾(が)は鱗翅(りんし)類の昆虫で、その翅の表面はウロコ(鱗)状の鱗片(りんぺん)で覆われているのが特徴です。モルフォチョウの鱗片には微細な溝が幾筋にも入っているため、光が干渉しあって金属のような光沢を示すのです。

 コガネムシ(黄金虫)もメタリック塗装の自動車にも似た金属光沢をもちます。また、都会ではあまりみかけませんが、メタリックな金緑色に2本の赤紫色のストライプがはいったタマムシ(玉虫)の翅はとても美しく、古くから工芸品の装飾などに用いられました。法隆寺に伝わる国宝・玉虫厨子(たまむしのずし)には、透かし金具の下に、約4500匹のタマムシの翅が敷かれたといわれます。

 コガネムシやタマムシなどの甲虫(こうちゅう)類の金属光沢は、翅を層状に覆う薄膜のプリズム効果による光の干渉現象です。物質表面の薄膜は光のパレットのように、さまざまな色彩をつくります。コーティング塗装したように見えるチタン製品の淡い色も、表面に生成する酸化チタンの薄膜によるものです。また、新品のノコギリが使ううちに青紫色を帯びるのも、生成した酸化鉄の薄膜が、ある波長の光を吸収するからです。
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■■ 多層薄膜による真珠光沢 ■■
 真珠の淡い虹色の光沢は、炭酸カルシウムの多層薄膜による光の干渉現象です。貝殻をつくるべき外套膜(がいとうまく)という組織が、何らかの原因で体内に炭酸カルシウムを堆積させてできたのが天然真珠です。養殖真珠はこの生理作用を利用し、外套膜の切片と真珠層の芯となる核を切開手術によって挿入して育てます。人為的に核を入れるとはいえ、真珠層を形成するのは貝の働きであり、養殖真珠だから美しさが劣るということはありません。

 一方、人工真珠とか人造真珠と呼ばれるものは、工業的につくられる真珠の模造品です。人工真珠の歴史は古く、ルイ14世が栄華をきわめた17世紀半ばのフランスで、ある職人が中空のガラス玉の中を、魚のウロコを混ぜた溶液で塗布し、ロウを詰めてつくったのが最初といわれます。当初は銀色の腹をもつある種のウナギのウロコが使われ、その後、ニシンなどのウロコが用いられました。日本ではタチウオの銀色のウロコも使われています。

 生物のメタリックな光沢や真珠光沢は、表面の微細な溝やスリット、薄膜などによる光の干渉現象によるものですが、本来の金属光沢は電子の振る舞いによって生まれます。物質中の電子には、原子や分子に動きを制限された束縛電子と、自由に動き回れる自由電子があります。金属が電気や熱のすぐれた伝導体となるのは自由電子によるものです。

 金属特有の光沢もこの自由電子が深く関係しています。光とは電界と磁界が交互に振動しながら伝わる電磁波の一種です。しかし、光が金属表面に入射すると、金属表面の自由電子は、いわば電気的なカーテンをつくって侵入しようとする光を跳ね返します。このときの反射率が高いほど、金属は白っぽく見えますが、一部の波長は金属表面で吸収されるため、特有の金属光沢とともに、さまざまな金属色が生まれます。このため、錆びることのない金は、黄金色の輝きを永遠に保つのです。
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■■ 身の回りに増える薄膜応用製品 ■■
 薄膜の作成法は数10種類もあります。加熱した基板に、気化した材料をキャリアガス(ヘリウム、酸素など)とともに送り込み、基板表面の化学反応を利用して薄膜を生成させる方法はCVD法(化学気相成長法)と呼ばれます。半導体の酸化膜やMOSデバイスなどの製造に利用される薄膜生成法の1つです。

 また、MDやDVDの記録膜、反射膜、保護膜などを成膜させるのに活用されるのはスパッタリングと呼ばれる方法です。HDD用磁気ヘッドもまた、さまざまな薄膜生成技術を取り入れ、ウエハとして生産されます。薄膜技術なくして現代エレクトロニクス社会は成り立ちません。

 電車の切符、バーコードラベル、プリペイドカードなどに使われるサーマルプリンタのヘッドにも、先進の薄膜技術が投入されています。直線的に並べた発熱体に信号に応じた電位を加え、発生した熱エネルギーによって媒体に文字や絵を印刷するのがサーマルプリントヘッドの役割。アルミナ基板の上に蓄熱層であるグレーズ、発熱体、電極、保護膜が多層化された構造となっています。発熱体はある種の電気抵抗体ですが、1秒間に数100〜1000回以上も繰り返し発熱を繰り返すため、すぐれた熱応答性が必要です。また、媒体と直接接触する保護膜にはすぐれた耐磨耗性も求められます。
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《コラム・製品情報》
多様なニーズに迅速に対応
スパッタリングターゲット

 薄膜生成法の1つであるスパッタリング法の装置は、陰極と陽極を設けた容器中に、低圧の不活性ガス(アルゴンなど)を封入した巨大な真空管のようなもの。陽極に基板を置き、陰極に金属や金属化合物の材料を置いて、電極間に高電圧を加えるとプラズマが発生します。このプラズマを電界と磁界で保持させながら、不活性ガスのイオンを材料に高速で衝突させると、材料表面から原子、分子が叩き出され、基板に付着、堆積して薄膜が形成されるのです(スパッタは“跳ねかける”という意味)。

 不活性ガスのイオンを衝突させる金属や金属化合物の材料のことを、スパッタリングターゲットといいます。近年、エレクトロニクス分野での薄膜の応用は、さまざまな領域で拡大していますが、均一な薄膜を形成するには、スパッタリングターゲットの品質が大きく関係します。

 アモルファス合金や希土類合金などで蓄積した材料技術と先進の粉体制御技術、成形技術などを駆使、多様な薄膜ニーズに最適の組成・構造で提供するのがTDKのスパッタリングターゲット。次世代の薄膜応用製品の量産化を強力に支援します。

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