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磁気と生体

第24回「磁性材料と生体磁気」

-水惑星の生物が手にした磁性材料-

■御雇外人教師ユーイング。来日中の2大功績

 日本地震学会が発足したのは1880年。この年マグニチュード5.5〜6の京浜地震が発生、横浜などに被害をもたらしたのが発足のきっかけといわれる。地震が自然科学の研究対象となったのは、これ以後のことだ。

 世界に先駆けて地震学が日本で誕生することになったのは、当時、明治政府の招聘で来日していた御雇外人教師たちの好奇心と科学的探求心の賜物である。地震に慣れっこになっている日本人と遠い、彼らにとって地震は恐ろしくも珍しい自然現象だったようだ。

 振り子の原理を利用した水平地震計を考案したのも、御雇外人教師の1人で、東京大学において教鞭をとっていたイギリスの物理学者ユーイングである。彼はまた5年間の日本滞在中に、電磁気学においても多大な業績を残している。学生たちに電磁気学の実験指導を行っているうち、かの有名な「磁気ヒステリシス」現象を発見したのである。

 磁性体に外部から磁場を加えると、磁性体は磁場の強さに応じて磁化され、やがて磁気飽和状態に達する。ここで外部磁場をゼロにしても、磁性体には残留磁化が残って最初の状態には戻らない。また、逆向きの磁場を加えると、逆向きの磁極で磁気飽和状態に達する。

 加える磁場の強さをX軸、磁性体に残留する磁化の強さをY軸としてグラフを描くと、この磁性体の磁化過程は、ふくらみをもったS字型の閉曲線となる。これが、電磁気学の教科書に必ず登場するヒステリシス(磁気履歴曲線)である。

 近年、地電流の変化をキャッチして、地震を予知しようという研究も進められているが、以前からエレクトロニクスと地震学とは因縁浅からぬ関係にあったのである。



■自然界の磁性もさまざま、生物に関わるフェリ磁性

 ところで、自然界の磁気は物質のどのような作用によって生み出されるのだろうか。

 地球はしばしば巨大な磁石にたとえられる。一方、原子は原子核とそれを取り巻く電子からなるから、原子核を地球とみなせば、原子核が磁気を生み出しているようにも思える。しかし、原子核がつくる磁気は無視できるほどきわめて微弱であり、物質の磁気の担い手になっているのは電子のほうである。

 物質の磁気的性質の違いは、それぞれの原子を取り巻く電子の磁気モーメントの違いから生じるものである。いわゆる磁性と呼ばれるものは、次のように分類されている。

 物質の磁性は大きく秩序磁性と無秩序磁性に分けられる。電子の磁気モーメントの向きが、ある規則で並んでいるのが秩序磁性、バラバラなのが無秩序磁性である。

 秩序磁性のうち、フェロ磁性というのは、電子の磁気モーメントの向きが一方向に整然と揃ったものをいう。鉄やコバルト、ニッケルなど、結晶全体が永久磁石になりやすい性質の物質はこのフェロ磁性をもつ。また、反強磁性というのは、電子の磁気モーメントが互いに反対向きで打ち消し合うものをいう。

 生物磁石と関係が深いのはフェリ磁性である。これはフェロ磁性と反強磁性の中間タイプといえるもので、結晶中に異なる2グループの磁性原子が存在するのが特徴である。この2グループの磁性原子の磁性モーメントは互いに打ち消し合っているが、片方の磁気モーメントが優勢なので、その差の分が自発磁化となり、さまざまな磁気的性質を発現する。

 エレクトロニクス分野で広く応用されているフェライト、磁気テープに使われるガンマ酸化鉄(γ-Fe2O3・マグヘマイト)、また、天然の磁鉄鉱(Fe3O4・マグネタイト)などはこのフェリ磁性体の代表である。



■鉄を取り込むタンパク質が生物磁石の前駆物質?

 1975年、マサチューセッツ工科大学のブレークモアにより発見された走磁性細菌は、じゅず状に並んだ約20個ほどのマグネタイト粒子を体内にもち、地磁気や人工的に加えられる外部磁場に応じた動きをする。

 マグネトソームと命名された走磁性細菌の磁鉄鉱粒子の大きさはおよそ50nm(ナノメートル・1nmは10億分の1m)ほど。膜のようなもので包まれており、細菌が天然の磁鉄鉱を摂取して生物磁石として利用していることは明らかだが、体内でどのように生物磁石がつくられるかは、今もって謎のままである。

 一方、こうした生物磁石は、走磁性細菌のみならず、ミツバチの腹部、伝書バトやイルカの頭部からも発見されている。いずれも天然の磁鉄鉱とみられる生物磁石である。生物磁石が磁鉄鉱からなることは、次のようにして知ることができる。

 生物磁石はタンパク質と結びついているので、まず生物を解剖して残留磁化を示すタンパク質部分を分離する。こうして集めたタンパク質に徐々に温度を加えていきながら残留磁化を測定すると、ある温度で磁化状態が急変する。これはキュリー温度と呼ばれるもので、磁性体の相転移により、フェリ磁性体が無秩序磁性の常磁性体に変わることを示している。マグネタイトのキュリー温度である580℃近辺の温度で急変が起これば、生物磁石は天然の磁鉄鉱であることが推測されるのである。

 タンパク質は謎の多い物質だが、一説によればフェリチンという鉄タンパク質が、生物磁石の前駆となるタンパク質ではないかともいわれている。フェリチンは動物の肝臓や小腸などに含まれる分子量46万ほどのタンパク質で、鉄の吸収と貯蔵にきわめて重要な役割を果たしている。

 鉄は生物体内の酸化還元反応に関与する必須微量元素で、鉄が欠乏すると酸素運搬をする赤血球中のヘモグロビン(鉄タンパク質)の量が減少して、貧血を起こしたりすることはよく知られる。生体の酸化還元反応とは、ヘモグロビンによって運ばれた酸素が、生体組織から奪われた電子や水素イオンと結合して水となる一連の化学反応である。これは呼吸鎖とも、電子伝達系とも呼ばれる。

 この電子伝達系は生体の物質合成とも深く関わっている。生物磁石がいかに産生されるかは明らかではないが、生体の電子伝達系の一部で行われていることは確かである。

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