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磁気と生体

第20回「血液と磁気」

-磁気は血液をマッサージする-

■ヒルデガルトの宝石療法

 「宝石療法(ストーン・ヒーリング)」と呼ばれるものがある。昔から宝石には神秘的な力があり、身につければ災厄を防いだり、幸福を招くと伝えられてきた。誕生石をお守りにするのはその名残りであるし、現在でも、ラピスラズリ(青金石)や水晶といった天然石が、おまじないグッズとして売られていたりする。

 こうしたバビロニア起源といわれるヨーロッパの占星術とは無関係に、天然石が病気の治療に役立つことを発見したのは12世紀ドイツの女性神秘家ヒルデガルトである。

 幼少時のころから特異な直観力をもっていたヒルデガルトは、植物や金属、鉱物といった自然の被造物に潜む不思議なはたらきを知っていたようで、その主著『自然学(フィジカ)』には、ハーブ療法や宝石治療のことが詳細に語られており、実際、天然石による病気治療も行っていたようである。正式な学問を修めていたわけでもなく、学会と無縁な修道女であったため、宗教的啓示書のように扱われてきたが、その内容はきわめて鋭い自然観察力によることが明らかにされ、近年、各方面から高く評価されるようになっている。いわばヒルデガルトは、百草をなめて医薬をつくったといわれる中国古伝説上の帝王、「神農」にも比肩すべき偉大な博物学者・薬学者であったわけだ。



■磁気治療は心理療法ではない

 宝石に霊力が宿るとみなすのは科学的ではないが、かといって、宝石療法を単なる迷信として片づけるのも偏見である。ヒルデガルトの宝石療法は、心身の調和を回復するための一種の主体的な心理療法とみなせる。薬効のないプラシーボ(偽薬)が、しばしば作用を現すのは本人の「思い込み」による心理的効果だが、宝石療法は本人の心と宝石との「共感」なしに効果は現れないからだ。

 服用もしない宝石に薬効があるわけではない。しかし、自分の心と共感できる宝石を見つけ、そのルーツに思いをはせたり、神秘的な輝きに魅せられることで心身の調和が取り戻され、結果として病気が癒されることもあるのだろう。ストレスのような心身不調和ならなおさらである。これは自律訓練法とかバイオフィードバックといった現代のストレスコントロールと似たところがある。現代人が宝石療法に関心を示すのも、心から共感できるものを失っていることの現れかもしれない。

 宝石療法と似て非なるものが磁気治療である。もちろん、磁気の不思議な作用や人体という宇宙に思いをはせることは、磁気治療の効果を高めることに寄与するかもしれない。しかし、磁気は霊力のようなものではなく、機器によって測定できる物質の根源的な作用であるし、肩こりなどにきわめて有効であるという医学的なデータも多くある。早い話が磁気の効果を信じる信じないに関係なく、磁気治療は効果を示す。これが宝石療法との決定的な違いである。



■血液の働きにこそ生命は発現する

 生体と磁気の関係に血液が深く関与している。人体は内臓や筋肉組織のみで成り立つものではなく、また、血液のはたらきは酸素や養分の補給にとどまるものでもない。一部の内臓を手術で切除しても生命は維持できるが、血液なくして生命はありえない。血液こそ生命の根幹をなすものであり、その活動の乱れはさまざまな病気のもとになる。

 ところで、17世紀にハーベーが血液循環説を提唱するまで、ヨーロッパ医学では血液は人体で生産されて使い捨てにされているものと考えられていた。また、病気は悪い血の滞留によって起きるものとみなされていたから、それを人為的に放出させる瀉血療法(しゃけつりょうほう)が中世ヨーロッパでさかんに行われていた。

 これに対して、19世紀のベルナールは生体の組織液を内部環境と呼び、20世紀にはいってからはキャノンが血液系をはじめとする生体の恒常性のことを「ホメオスタシス」と名づけて、その重要性を指摘した。血液は生命という超越的な存在を支える下僕のようなものではなく、血液系をはじめとする生体のホメオスタシスにこそ生命は発現しているとみなす。これは東洋医学ではあたりまえの考え方であるが、ヨーロッパにおいては医学のコペルニクス的転回ともいうべき革命的な意味をもっていた。現在でもなお、病原体を薬でたたいたり、病変部位を手術で除去してしまうという考え方がヨーロッパ医学の主流であるからだ。



■生体にとって磁気は一種の「引き金」

 人体におよぼす磁気作用のメカニズムについては未解明な部分が多い。しかし、人体のホメオスタシスという考え方に立てば、磁気治療の有効性は苦もなく理解できる。

 磁気と生体についての研究において、わが国の第一人者であり、磁気治療の医学的有効性を立証したことで知られる中川恭一博士は、磁気の治療効果は「物理的触媒様作用」であるという説を提唱している。

 電解質溶液の流れが磁場を横切るとき電磁誘導によって起電力が発生するが、この現象は血流と地磁気あるいは人工的な磁場環境との間にも起きており、外部から加わる磁気エネルギーは、血液の電解質解離などに影響を与えていることも明らかにされている。かといって、外部から加えられる磁気エネルギーがあたかも養分のように体内に摂取されるとみなすのは、磁気を霊力のようにコジツケる非科学的な解釈である。そうではなく、磁気エネルギーは人体の内部環境である血液系のホメオスタシスを維持するように作用する。それは体内を巡る血液が運動エネルギーをもち、磁気は血液の電解質成分に作用して、運動エネルギーの一部を電気エネルギーに変換するためと考えられている。細胞の化学反応は電気現象でもあるため、間接的に細胞の代謝に影響を与えるというのである。

 血液バランスの微妙な変化が体調に大きく関係するにもかかわらず、それがあまり重要視されないことから、現代病といわれるものが登場することになる。細胞や内臓などに異変がみられないうちは、なかなか病気として認められない。しかし、ホメオスタシスはたえず揺れ動いているものであり、だれでも多かれ少なかれ病気の状態にある。病気は撲滅すべきものではなく、病気という状態を正常に戻すという考え方が健康維持には不可欠なのである。

 あらゆる薬というものは人体に対して引き金のような効果をもつだけであり、病気は人体に本来備わった自己治癒力によって治るものだという説がある。人体の免疫というのもそのような自己治癒力のことである。外部から加わる磁気エネルギーの影響、いわば磁気による血液のマッサージといえる磁気治療も、人体に対して、健康への一種の引き金となるといえよう。


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