TDK
Tech-Mag TDK Techno Magazine 〜テクマグ〜
サイト内検索
メールマガジン登録個人情報保護基本方針
home
電気と磁気の?館
じしゃく忍法帳
フェライト・ワールド
column
テクの雑学
アースサイエンス&TDKテクノロジー
パワーエレクトロニクス・ワールド
コンデンサ・ワールド
なるほどノイズ(EMC)入門2
なるほどノイズ(EMC)入門1
過去の読み物

TDKホームページ
 トップページテクの雑学 > 第164回 燃料に石油要らず!発電効率も高い! 〜意外とエコな火力発電「ガスタービン・コンバインドサイクル」方式〜
テクの雑学

第164回 燃料に石油要らず!発電効率も高い!
〜意外とエコな火力発電「ガスタービン・コンバインドサイクル」方式〜

ガスタービンのメリットとデメリット

 ガスタービンの構造と作動は、いたって簡潔なものです。前方に配したファンを回転させて空気を吸入し、続いて多数の羽根車を持つ圧縮機で圧縮します。圧縮されたことで高温・高圧となった空気が、次に燃焼器に送られたところで燃料を噴射します。始動時にだけ点火を行いますが、いったん燃焼が始まったら、その後は燃焼器内で常に燃焼が起こり続けます。燃焼によって生じたガスは、膨張しながら後方に高速で流れていくので、それを作動流体としてタービンを回転させ、その回転エネルギーを機械エネルギーとして取り出す、というものです。ちなみに、作動流体でタービンを回さず、ノズルから噴射するエネルギーをそのまま推力として使うのが、「ターボジェット」や「ターボファン」と呼ばれる構造のジェットエンジンです。

 ガスタービンは回転運動だけで成り立つので振動が少なく、1分あたり数万回転という高速な作動が可能なので大量の空気を吸い込むことができ、その量に応じた燃料を燃やせるので、体積あたり出力が大きいこと、低質燃料でも運用が可能、希薄燃焼に対応できるので排ガス成分中の有害物質が少ない、といったメリットがあります。
 それに対してデメリットは、容積型に比べて熱効率がやや不利になること、各部が高温・高圧にさらされるため、高価な耐熱性材料が必要で、回転バランスを完全に取らなければならないといった製作上の問題、超高回転で作動するため、短時間で回転を上下させなければならないような運用には適さないこと、全体の流速が非常に速いため、吸気・排気の騒音が大きくなりがちなことなどがあげられます。

 そのようなメリットとデメリットを勘案した上で、ガスタービンはさまざまな用途に用いられています。たとえばヘリコプターの多くはガスタービンを動力に使う「ターボシャフトエンジン」を用いていますし、燃費よりも速度が優先される類の船舶にも採用例があります。また、鉄道車両や大型自動車のハイブリッド式動力装置の動力源としても用いられています。

いいとこ取りのコンバインドサイクル発電

 ガスタービンの持つ特性は、発電用途にも向いています。まず、石油系ではなく、天然ガスや石炭ガスを燃料に使えることが大きなメリットとしてあげられます。これらは排気中の有害成分低減の点でも有効です。また、ボイラーを使った汽力発電のように大規模な装置では、出力を調整するのにある程度の時間を要しますが、ガスタービンなら迅速に対応できるので、需要予測に応じた効率の良い運用が可能になります。同じ敷地面積に複数の発電機を設置しておき、必要に応じて稼働台数そのものを変えるといった運用も容易です。
 ただし、ガスタービン発電の課題は熱効率の低さでした。燃焼ガスの流れが非常に高速で、かつ連続燃焼なので、作動中にタービンに大量の熱が伝わってしまいます。この熱エネルギー分が損失となるため、容積型に比べて熱効率が低かったのです。対策として、一般的にはタービン翼そのものの冷却性能を高めたり、燃焼温度を一定以下に保てる空燃比での運用が行われますが、発想を転換し、廃熱そのものでも発電を行えるようにしたものが「コンバインド(combined:複合、合成)サイクル発電」です。

 これも仕組みはいたって簡単なもので、ガスタービンの排気中に含まれた熱でお湯を沸かして蒸気タービンを回し、そこでも発電を行うものです。コンバインドサイクルでは、タービン入口の温度が高ければ高いほど排気温度が高まり、多量の蒸気を発生させられますから、その点が開発上の課題となりました。一般的なガスタービンでは、材質の耐熱性などの制約から、タービン入口のガス温度はせいぜい1,000℃程度で運用されていますが、1970年代後半からは航空機用エンジンの技術が導入されたことで、より高温での運用が可能となってきたのです。東京電力が1985年に富津火力発電所で初めて導入したコンバインドサイクル発電では、入口ガス温度を約1,100℃まで高め、熱効率を47.2%にまで向上させました。従来の汽力発電では44%程度が限界でしたから、劇的な効率改善と言っていいでしょう。

 さらに効率を高めるため、入口ガス温度を1,300℃まで高め、さらに蒸気タービン側もより高温・高圧に対応できるように改良を加えた「高圧型」に続けて、その排熱を再利用する「中圧型」「低圧型」と複数を配置することで、50%を超える熱効率を実現した「アドバンスド・コンバインドサイクル(ACC)」発電所も稼働中です。また、入口温度を1,500℃まで高め、タービン自体を蒸気の一部で冷却することで熱をより有効に活用する「モア・アドバンス・コンバインド・サイクル(MACC)」方式では、熱効率を60%程度にまで高めています。ちなみに、これは1950年来の火力発電所の3倍程度に相当する熱効率です。
 さらに、タービンを回し終わった蒸気そのものや熱を近隣の工場などに供給することで、さらに全体の効率を高める試みも構想されています。

 将来的なエネルギー供給のあり方を考える上では、「ベストミックス」の観点が不可欠です。その中にあって、天然ガスや石炭ガスなど多様な燃料から高い効率で発電できるコンバインドサイクル発電は、主軸の一つとして多いに期待できるものです。みなさんも、これからの電力供給がどんな方法で行われていくかに注目していただきたいと思います。


著者プロフィール:松田勇治(マツダユウジ)
1964年東京都出身。青山学院大学法学部卒業。在学中よりフリーランスライター/エディターとして活動。
卒業後、雑誌編集部勤務を経て独立。
現在はMotorFan illustrated誌、日経トレンディネットなどに執筆。
著書/共著書/編集協力書
「手にとるようにWindows用語がわかる本」「手にとるようにパソコン用語がわかる本 2004年版」(かんき出版)
「記録型DVD完全マスター2003」「買う!録る!楽しむ!HDD&DVDレコーダー」「PC自作の鉄則!2005」(日経BP社)
「図解雑学・量子コンピュータ」「最新!自動車エンジン技術がわかる本」(ナツメ社)など


前のページへ | 2/2 | 次のページへ

ページtop
HOME 電気と磁気の?(はてな)館 アースサイエンス&TDKテクノロジー テクの雑学 コンデンサ・ワールド
Copyright(c) 1996-2014 TDK Corporation. All rights reserved.
※記事の内容は、記事掲載時点での情報に基づいたものです。一部、現在TDKで扱っていない製品情報等も含まれております。
TDKホームページは、Internet Explorer5.5以降、Netscape Navigator7.0以降でご覧いただくことを推奨しています。