株主・投資家情報 | 経営方針

トップメッセージ

TDKの未来は、過去の延長線上にはありません。磁性が秘めた無限の可能性を解き放ちながら、新たなTDKを創り上げていきます。

TDKは「100年企業」に向けて、グループ10万人の社員のエネルギーを結集し、「磁性技術」を根幹に据えた成長戦略を確実に実行していきます。

所信

「動的な攻め」と「静的な攻め」を両輪に

2016年6月29日の定時株主総会にて、株主の皆様のご承認を経て代表取締役社長に就任した石黒でございます。微力ではございますが、社業の発展に鋭意努力し、株主及び関係するステークホルダーの皆様のご期待にお応えしていく所存です。ご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。
私は、1982年の入社後22年間、磁気テープ事業部門に所属し、その後の12年間はHDD用磁気ヘッド事業に携わるなど一貫して磁性分野に身を置き、入社後半分に相当する17年間は、海外拠点に勤務してきました。国内外の工場で、生産管理や経営企画担当としての経験を積んできました。
生産拠点の立ち上げなど、数々のプロジェクトの指揮を執る中で、構想の実現に向けて社員を動かす具体的な仕組みづくりの大切さを学び、これまで一貫してそれに拘ってきました。そのため社長就任直後も、全社員に対して「社員が主役である」という考えを伝えました。
私がこれから具体化していく構想は、「体質強化」から「攻め」に舵を切った上釡会長が描いた、「磁性技術」を根幹に据えたTDKの成長戦略です。
上釡会長のダイナミックな経営姿勢を継承し、私も「攻め」の姿勢で臨む覚悟です。これが「動的な攻め」とするならば、「静的な攻め」にも取り組んでいく考えです。かつてカセットテープで一時代を築いていた頃のTDKは、高収益を誇っていましたが、現在の収益性は残念ながら他の電子部品企業と比べて低い水準に留まっています。この課題をきちんと直視し、稼ぐ力を底上げしていくのも私の役割だと考えています。「動的な攻め」と、この「静的な攻め」を両輪とし、社員が率先して取り組むことができる分かりやすい仕組みに落とし込むことで、戦略を着実に実行に移していきます。

「動的な攻め」のテーマ

不連続的な進化によりTDK の未来を創り上げていく

1980年代までは「磁気テープのTDK」と評され、2000年代にはHDD用磁気ヘッドで世界をリードし、近年では高周波部品や二次電池などが拡大してきたように、TDKは社会ニーズの変化や技術の進化を敏感に察知しながら、製品が衰退期入りする前に大胆に主力製品を入れ替えてきました。
世界初の磁性材料「フェライト」の工業化を目的として1935年に創業したTDKは、80年にわたってDNAである磁性技術を磨き上げながら数々のイノベーションを生み出してきました。磁性技術は紛れもない当社の競争優位といえましょう。また、材料を複雑な形状に成形する「成形技術」、精密な微細構造を焼成する「焼成技術」など、素材の持ち味を最大に引き出す「プロセス技術」も、当社が鍛え上げてきた強みです。TDKは、「磁性技術」を中核に据えながら、この「プロセス技術」を繰り返し応用することで新たなイノベーションを生み出してきたのです。例えば、磁気テープのコア技術は、二次電池などのフィルム応用製品の高性能化に活かされています。「薄膜プロセス技術」は、HDD用磁気ヘッドへの応用によりHDDの驚異的な高記録密度化に貢献し、さらに、次世代の薄膜電子部品にも転用しています。そしてこうした仕組みが、TDKに不連続的ともいえる進化をもたらし、当社の持続的な発展を支えてきました。
1950年代からグローバル化を進めてきたTDKは、多様な価値観を自然に受け入れる企業風土を醸成してきました。買収した企業の「考えを尊重する」ことに留まらず、TDKに欠けている技術などのリソースを有する彼らに積極的に主導権を渡してきました。
こうした国籍も会社も違う人々がパートナーとなって、同じ夢の実現を目指す文化、いわば「混成の強さ」はTDKの宝であり、これも変革の原動力の一つです。例えばHDD用磁気ヘッドの事業拡大の起点となったのは、1986年の香港のSAE Magnetics(H.K.)Ltd.の買収でした。また、2005年に買収した香港のAmperex Technology Limitedも、リチウムポリマー二次電池のシェア拡大に大きく貢献してきました。2008年のドイツの大手電子部品メーカーEPCOSグループの買収では、スマートデバイス向けの高周波部品における主要サプライヤーの地位獲得に加え、アルミコンデンサやフィルムコンデンサ、圧電材料部品など、自動車・産業機器向け事業ポートフォリオ及び顧客基盤の拡大を実現、パッケージング技術等技術面でのシナジーも生み出しました。特に高周波部品は近年、利益成長の強力な牽引役ともなってきました。
製品には賞味期限があります。HDDもスマートフォンも成熟期入りし、衰退する運命を逃れることはできないでしょう。しかし「磁性技術」「プロセス技術」などの技術は永遠です。また「混成の強さ」も無限の可能性を秘めています。これらの強みを駆使し、これまでとは一線を画すTDKの新たな姿を創り上げていくことが、「動的な攻め」のテーマだと認識しています。

変革の柱となる磁気センサ

TMR素子の大きな可能性を信じて

HDD用磁気ヘッドの国内オペレーションを統括する立場にあった2009年頃、上釡会長(当時社長)とともに、かつてカセットテープの製造拠点だったある工場の跡地に出向いたことがあります。跡地を見渡すことができる場所で、上釡会長が私に「このぺんぺん草の生えた跡地をよく見ろ。お前にも責任の一端があるんだ。カセットテープの技術を次につなげたのか?」と厳しい口調で言われたのを今でも覚えています。続けて「磁気ヘッドにぺんぺん草を生やしたら容赦しないぞ。好調なうちに次も考えろ」と奮起を促されました。先に「永遠」と申し上げた技術は、「工場」に宿ります。工場を閉鎖したカセットテープは、蓄積された技術やノウハウの応用展開が十分にできませんでした。私が「HDD用磁気ヘッドの次」を模索し始めたのはこの時からでした。
HDD用磁気ヘッドのTMR素子は、極めて微弱な磁気信号をキャッチできる高精度・高感度のセンサです。しかし当時は、ほかにはほとんど応用していませんでした。当初は、雲を掴むような気持ちでしたが、「TMR素子を使った磁気センサは将来、きっと社会の役に立つ」という信念で、ベテランエンジニアを含むわずか3名で夢の実現に向けて開発に着手しました。
私たちは大変泥臭くプロジェクトを進めていきました。粗々の試作品と手製の資料を持って、あちこちの展示会でTMR素子のセンサとしての可能性を根気強く説明していきました。次第に話を聞いていただけるようになり、お客様が抱えている課題と技術の摺合せを進めていく中で、TMRセンサの可能性に確信を持つようになっていきました。そして6年後の2015年、当社は車載用磁気センサの量産を開始し、現在40社以上のお客様から引き合いをいただき、着々と承認活動が進行しています。
これからのTDKの新たな柱となっていく磁気センサは、このように「お客様に育てていただいた」ともいえるのです。

IoT時代の成長戦略

パートナーとのシナジーにより高い付加価値を創出

今後、我々が掴んでいくのはIoT(Internet of Things)という大きな潮流です。そこでは、センサやアクチュエータ、通信モジュールが世の中の至る所に埋め込まれ、それらが相互につながりながらデータを創出・解析し、実世界にフィードバックをかけていくことが社会レベルで動き始めます。無数の電子部品が使われていきますので、電子部品メーカーの可能性は無限に広がっていくと考えています。その中で当社は、「磁性技術」「プロセス技術」といった技術と、成長分野で形成したマトリックスの「交点」に焦点を当て、我々にしかできない高い付加価値を提供していく考えです。
電子部品には、超小型化、高集積化、高機能化、モジュール化といったニーズが年々高まっています。IoT 時代には、さらに技術的要求が高まっていくことが確実視され、アプリケーションを拡げる能力も成功のカギを握っていくでしょう。当社は、「交点」においてこうした変化に対応するためのリソース補強の必要性を認めた場合は、自ら膨大な投資を行ってリソースを補強するのではなく、外部パートナーとの協業に軸足を置いていきます。すでに2015年から2016年にかけていくつかの取り組みを実施していますが、それらはいずれも大きなシナジーの創出が期待できるパートナーシップです。
2015年5月、台湾のAdvanced Semiconductor Engineering Inc.(以下、ASE社)とIC内蔵基板製造の合弁会社を設立しました。これは、当社のインダクティブデバイスやHDD用磁気ヘッドの製造で培った微細加工技術と材料技術を結集して開発したIC内蔵基板SESUBと、ASE社の高度なICパッケージ技術、テストソリューション技術を融合し、スマートデバイスの小型化、薄膜化、軽量化に対応するとともに、生産能力も増強することが目的です。
「自動車と磁気センサの交点」で、付加価値を大きく高めるための取り組みが、スイスのMicronasSemiconductor Holding AG(以下、ミクロナス社)の子会社化です。位置情報を検出・測定するホールセンサのリーディングカンパニーであるミクロナス社の買収によって、多面的なシナジーの創出が可能になりました。同社が30年間にわたり蓄積してきた磁気センサのマーケットに関するノウハウは、アプリケーション拡大に向けた強力な武器となります。また、同社が得意とする回路設計技術とTDKのTMR素子を組み合わせることで、センサのデジタル出力を極めて高精度にすることができます。
特に戦略的重要性が大きいのが製品のハイブリッド化による付加価値の向上です。これについては後ほどその可能性をご説明します。ミクロナス社がパートナーになったことで、お客様のご希望にお応えするためのアイデアの自由度が飛躍的に向上しました。もちろんリードしていくのは、マーケットを知り尽くしたミクロナス社です。
また当社は、Qualcomm Incorporated(以下、クアルコム社)と高周波部品の提供を行う合弁会社RF360 Holdings Singapore PTE, Ltd.を設立することで合意しました。合弁会社は、当社が高周波部品で蓄えてきた技術と、クアルコム社の子会社であるQualcomm Technologies, Inc.(以下、QTI)の先進ワイヤレス技術を融合した最先端のRFソリューションを提供できる強力なプレイヤーになります。当社はさらに、クアルコム社、QTIと受動部品、電池、非接触給電、センサ、MEMSなどを含めた次世代モバイル通信、IoT及び自動車関連分野における広範囲な分野で、技術協力を深めていくことでも合意しています。IoTの世界では、データを収集するセンサ、解析するCPU、データを実世界にフィードバックする通信チップセット、そしてデバイスを駆動させるアクチュエータや電池及びパワーマネジメントの技術も必要になります。また、超小型デバイス向けのモジュール化技術も求められます。通信モジュールをコントロールする頭脳に当たるチップセットメーカーのグローバルリーダーであるクアルコム社と、現実世界でのインターフェイスとアクチュエーションに強みを持つTDKの協業は、求められる技術の多くを充足する極めて理想的な補完関係を実現します。
一つの「交点」から複数の「交点」に波及するようにシナジーを創出していきたいと考えています。

IoT時代のモノづくり

ゼロディフェクトで差別化する「TDKインダストリ4.5」

当社は、IoT時代の可能性をモノづくりの面でも追求しています。ドイツで産官学の連携により進められている「インダストリ4.0」は、IoTによって製造ラインが自律制御することで、生産効率を飛躍的に高めていこうとするものです。当社は「品質」を加えてその一歩先を行くという想いを込めた「TDKインダストリ4.5」の実現を目指しています。2016年10月に秋田県の本荘工場と稲倉工場に竣工した新しい製造棟は、カメラやセンサによる監視システムネットワークで、製造ラインが自律的にリアルタイムで工程の問題点を感知します。そして、ビッグデータで分析して工程にフィードバックする源流管理を行い、ゼロディフェクト品質を追求、同時に在庫管理、エネルギー効率の面でも革新に取り組みます。これら国内拠点を発信基地とし、世界に展開していくことで、世界中のどの拠点でも同一品質の製品を製造する当社の構想「ロケーションフリー」を実現し、モノづくりでも過去と一線を画すイノベーションに取り組んでいく考えです。

利益成長シナリオ

2018年3月期より再び利益成長へ

当社は、契約締結日より30ヵ月後に保有する49%の合弁会社株式をクアルコム社に売却(クアルコム社は取得)するオプションを保有しており、オプションの行使がなされた場合、譲渡価格は約30億米ドルとなる見込みです。当社は、このオプションが行使されることを前提に2018年3月期までの中期経営方針を設計しています。計画の最大のポイントは、「センサ・アクチュエータ」「エネルギーユニット」「次世代電子部品」を戦略成長製品と位置付け、「自動車分野」「ICT」「産業機器・エネルギー」の重点3市場との「交点」で拡大していくという点です。2018年3月期までに戦略成長製品の売上高を1,000億円に拡大するための積極的な戦略投資を打ち出していますが、2016年3月期の決算公表時には、設備投資を方針公表時の3年間合計3,500~4,000億円から4,300~4,800億円に増額することを発表し、戦略加速に向けた意志を示しました。
計画1年目の2016年3月期は、パソコンの需要減や、HDDからSSD(Solid State Drive)への置き換えが想定以上に進行し、HDD用磁気ヘッドの出荷数量が期初計画に対して下振れしましたが、それを受動部品とフィルム応用製品がカバーし、売上高は過去最高を更新、営業利益は前期比29%増となりました。今期以降のシナリオとしては、2017年3月期までは事業構造の転換に向けた成長投資に軸足を置く方針のため、また期初よりも進行した円高の影響も考慮し、今期は減収減益を予想計画しています。2018年3月期より戦略成長製品への投資を実らせ、利益成長につなげていき、2019年3月期以降は、戦略成長製品を一層、伸長させるイメージを描いています。
(詳しくは、P20 中期経営方針をご参照ください)
これまで収益の柱となってきたHDD用磁気ヘッドは、今後も厳しく見通さざるを得ません。当社は、自社の生産拠点の集約等による「自社のライトサイジング」による収益性の向上に努めるとともに、従来の枠組みを超えた協業による「業界のライトサイジングへの貢献」や先端技術による製品サービスの提供等によって、投資を抑制しつつ残存者利益の確保を目指していく方針です。

戦略成長製品の拡大戦略

センサ・アクチュエータの「4 段ロケット」

戦略成長製品のうち、「センサ・アクチュエータ」については、非光学式センサ全般に取り組んでいく方針ですが、中心となる磁気センサは「4段ロケット」を打ち上げるような成長シナリオを描いています。
1段目は、車載用の角度センサや圧力センサ、湿度センサです。電装化という追い風に乗って、アプリケーションと顧客基盤の拡大に力を注いでいきたいと思います。
2段目が、民生用需要の取り込みです。高精度、省電力といった特性を活かしてB2B2Cの広大なマーケットでもTMRセンサのアプリケーションを開拓していきます。また、製品サイズが車載用の10分の1程度になり、ウエハ当たりの取り数が増えるため事業効率が向上することも期待しています。
こうして面を拡げた後の3段目が、先にお話ししたミクロナス社とのシナジーの最大化です。車載用センサは、命に関わることもあり、万が一の事態を想定して二重化が求められます。同じ性質のセンサでは2つとも不具合が生じる可能性は残りますが、メカニズムや材料が異なるTMRセンサとホールセンサをハイブリッド化すれば、リスクは格段に小さくなります。ミクロナス社のASICやパッケージング技術も活用しながら、センサの付加価値を大きく高めていきたいと思います。
4段目は、モジュール・センサシステム化です。センサとプロセッサ、組織モジュール、トランスミッタなどを組み込んだシステムとして提供し、より一層お客様のお役に立つソリューションを提供していく方針です。
アクチュエータについては、すでにスマートフォンのカメラモジュール向け手振れ防止用のOIS(Optical Image Stabilizer)とオートフォーカス用のVCM(Voice Coil Motor)を提供していますが、今後はセンサの強化と並行し、保有技術と新規技術の活用により高精度、低消費電力の製品を市場投入していく方針です。
「エネルギーユニット」という言葉が示す通り、当社ではリチウムポリマー二次電池などのエナジーデバイスの単体販売から、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせた付加価値の高いユニットへと軸足を移していく方針です。非接触給電機能、電力変換機能、蓄電機能、エネルギー制御機能及び各種センサをパッケージにして、産業機器や自動車向けのアプリケーションの拡大に取り組んでいきます。
「次世代電子部品」の成長は、クアルコム社とのシナジーがドライバーとなります。SESUBをはじめ、IC内蔵基板技術、薄膜技術、材料技術を融合させた次世代電子部品やモジュールなど高付加価値製品のラインアップを拡充していきます。2015年11月には、生産能力の強化を目的として、高度なクリーンルームを有するルネサス セミコンダクタ マニュファクチュアリング社鶴岡工場の譲受について合意しました。今後は、需要が拡大している薄膜製品の中核拠点として鶴岡工場を位置付けていく方針です。

収益性の向上に向けた「静的な攻め」

企業活動全般のサイクルを加速

収益性の向上に向けた「静的な攻め」

私は以前、HDD用磁気ヘッドを製造する工場で、リードタイムの半減に取り組んだことがあります。従業員600人ほどの工場が一丸となって1年をかけて目標を達成しましたが、同時に事業全体のサイクルの向上という形で広範囲に波及する副産物も生まれました。まず不要な在庫を抱えることがなくなり、生産効率も大きく向上した結果、量産前の新製品のサンプルをより早くお届けできるようになりました。
これによりサンプルに対するお客様のリクエストも早くいただけるようになり、新製品の開発や生産が早く回るようになりました。その結果、お客様に最先端の製品をいち早くお届けするという「付加価値」が提供できるようになり、原価率の低減につながったのです。これが私の収益体質改善に向けた考えの原体験となりました。
収益性の改善に向けた「静的な攻め」については、コストサイドの効率化にもメスを入れていきますが、コスト構造の見直しだけではやがて限界が訪れますし、組織も疲弊しかねません。また経営レベルで管理指標を睨みながら、いかに旗を振っても根本的な体質改善にはならないと考えています。私は、今お話ししたように、すべての現場を巻き込みながら泥臭く、しっかりと地に足をつけてTDK全体の収益体質を根底から変革するための取り組みを進めていきたいと考えています。そのためには、実践が収益性改善につながることを社員一人ひとりが実感できる仕組みやKPIが必要です。各事業や開発・製造・販売・管理部門などの機能ごとに異なる特性を踏まえ、例えば、製造・設計・試作・評価リードタイムなど、分かりやすいKPIを現場ごとにきめ細やかに設定する方針です。各社員が自らの役割を果たしていけば、TDKのあらゆる事業活動、キャッシュ、情報サイクルのスピードが自然に向上し、限界利益率の向上につながるような仕掛けです。「漢方薬」のようにじわじわと、しかし根本から変えていくアプローチですので、一朝一夕には成果を得ることはできませんが、強い決意を持って取り組みを進めていきます。こうした収益体質の改善と戦略成長製品の拡大を両輪として、経営目標として掲げる「営業利益率10%以上」「ROE10%以上」の達成を確実なものとしていきたいと思います。無論、両目標ともに10%で良いとは考えておらず、一層高い水準を目指していく考えです。

「100年企業」を創り上げていくために

創業精神を胸に刻み、挑戦し続ける

当社の社是「創造によって文化、産業に貢献する」には、用途も工業化の可能性もまったく未知数だった日本独自の発明品である「フェライト」の工業化に向けて立ち上がった創業者齋藤憲三の想いが込められています。「世の中にまだ存在しない価値を、素材レベルから創り上げる」という独創の精神と、「社会的価値があるという強い自覚を持ち、あきらめずに取り組んでいけば、必ず道は開ける」という信念です。
私はこの創業精神は、創業100周年に向けて確実に継承していかねばならないものだと考えています。当社は2015年、社是の解釈や表現を時代に合わせた「企業ビジョン」と「行動指針」を策定しました。その浸透に努めていくことも自身の使命と認識し、常に好奇心と創造力を磨き続け、社会が抱える課題の解決にテクノロジーで貢献する企業であり続けたいと考えています。社会的要請に応えるべきは「モノづくり」の面でも同様です。売上高の9割を海外で占め、世界約30ヵ国に拠点を有する当社は、国内外の多くの地域社会と密接に関わり合いを持ちながら事業活動を行っています。そうした地域社会への配慮なしに事業の継続性は担保されません。また、製造過程では多くの自然資本を消費しており、その安定的な確保のためには、環境に配慮したモノづくりが不可欠です。事業の持続性を確かなものとするために、すべてのステークホルダーの利益を尊重した事業活動を行っていく考えです。
創業100周年になる2035年を見据えて当社が取り組むべき最も重要な課題は、戦略を遂行する「人」の採用と育成です。IoT 時代の到来によって活躍の舞台が大きく広がっていく今後は、より多様な人材の登用と育成が求められます。性別や国籍、宗教、信条を問わず優秀な人材を積極的に採用するとともに、より一層の挑戦を促し、能力を最大限に発揮できるような人事・報酬制度も整備していきたいと考えています。
いち早くグローバル化を進めてきた当社は、「ガバナンス体制」の強化にも積極的に取り組んできました。2002年より社外取締役を招聘し、取締役会の議長、報酬諮問委員会及び指名諮問委員会の委員長も社外取締役が務めています。外国人執行役員も積極的に登用しています。2015年より、第三者による取締役会の評価を実施しています。
形だけの評価に終わらせることなく、課題への対応を経営陣が議論し、ガバナンスの強化に確実につなげています。第三者評価を受け、2017年3月期から新たに経理財務担当執行役員を取締役に選任しました。
今後も持続的な発展を実現していくために、「コーポレートガバナンス・ コード」の原則を踏まえつつ、実効性を伴ったガバナンス体制の構築に努めていきます。
私は、創業精神を胸に刻み、エレクトロニクスと「磁性」、そしてTDKの無限の潜在力を解き放つための挑戦を続けます。「100年企業」に向けて力強く歩んでいくTDKを、今後ともご支援賜りますようお願い申し上げます。

2016年10月

TDK株式会社
代表取締役社長
石黒 成直

石黒 成直

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