CSR活動 | 社会からの評価

有識者のコメント(CSRレポート2015レビュー)

David Sheasby

デビッド・シースビー(David Sheasby)
マーティン・カリー・インベストメント・マネジメント社
ガバナンスおよびサステナビリティ責任者

マテリアリティ

TDKが重点を置くべき分野が幅広く特定されていると思います。すなわち、人材、物議を醸している調達を含むサプライチェーン、環境負荷、多くの分野で創出される機会(本レポートで取り上げられていたのは、自動車、産業機器・エネルギー、未来社会)などです。しかしながら、私が常に注目しているのは、企業の構造や責任をはじめとするコーポレートガバナンスの分野です。なぜなら、コーポレートガバナンスは組織の持続可能性を評価する上で最も重要な側面の一つであると考えているためです。

CSRレポートに期待する点

  • 企業のビジョンと戦略、そしてそれらとCSRが合致しているか
  • マイルストーンを明確に設定した目標とそれに対する熱意
  • CSRの責任の所在がどこにあるか(それが取締役会レベルであることを期待します。
    報酬に連動しているのであれば強力なメッセージとなるため明瞭に記載すべきです。)
  • 企業のDNAの中にCSRがどの程度組み込まれているか(この点において、CSRレポートと財務報告書を統合すると有用かもしれません。)
  • 企業が重要課題をすでに特定していること(貴社は特定されています。)
  • 企業が潜在的リスクにどのように対処しその軽減を図っているか、またはどのように機会を捉えているか、さらにそれと企業戦略が合致しているか
  • 企業がリスク緩和の進捗や機会の評価に用いている主要な指標
  • 保証(貴社がされているように、第三者による保証があると有用です。)

重要課題

人材

イノベーションに後押しされる企業では特に人材が重要になりますが、御社の場合、従業員の大部分が海外にいるという課題にも直面しています。勤務先としてTDKが大変魅力的である理由、どのような人材育成や研修の機会を提供しているのか、従業員からどのようなフィードバックが求められているのか、多様性や健康などに関して導入されている方針にはどのようなものがあるかなどが知りたい点です。貴社が本レポートでされているように、従業員の視点からいくつかの意見が紹介されているのは非常に良い点です。

サプライチェーン

サプライチェーンは複雑であるため、最大の課題といえます。サプライチェーンの管理方法、サプライヤーに求める基準やレポート、サプライヤーに対する監査プロセス、要求する基準を満たさなかった結果として起きた事例(企業名ではなく)に関心があります。

環境負荷

ここで重要なのは直接的な影響や、その評価と管理の方法、サプライチェーンに関して定めた間接的な影響についての要件です。現在の影響と目標を、タイムラインと併せて確認できることが望ましいでしょう。

機会

企業がより良い社会づくりにどのように貢献しているかという点です。

社会問題に関しては、多くの企業が、教育プログラム、環境プログラム、慈善目的のスポンサーシップなど、広範な地域社会における活動について報告します。

Justin BakuleSheasby

ジャスティン・バクル氏(Justin Bakule)
シェアード・バリュー・イニシアチブ
エグゼクティブディレクター

ジャスティン・バクル(Justin Bakule)氏は、シェアード・バリュー・イニシアチブの創設からのエグゼクティブディレクターとして、全般的な戦略の統括・管理を担当しています。企業、市民団体、政府機関、学術団体など、同イニシアチブのあらゆるステークホルダーと緊密に連携し、共有価値の研究の発展と理解、共有価値の概念の実践、世界的な実践者コミュニティの成長などを追跡し、働きかけを行っています。
15年以上にわたり、企業、財団、NPO、政府機関などを対象に戦略とパフォーマンスの管理に関する助言を提供。FSGのシェアード・バリュー・コンサルティング部門を率い、マース社やアラウコ社などのクライアントを担当しました。また、平和部隊に所属し、マリ共和国のガオでマリ観光省と協力して小企業開発ボランティア活動に従事していました。さらに、PwCコンサルティングとIBMグローバル・ビジネス・サービスで戦略コンサルタントを務めるなど、民間セクターのコンサルティングにおける豊富な経験を持っています。

TDKの取り組みやプログラムの中で高く評価できるもの

TDK CSRレポート2015には、テクノロジー、人材、サプライチェーン、環境への影響などの幅広い企業活動が盛り込まれています。また、同社のコーポレート・ガバナンスや組織構造に関する見解、内部プロセス、社内外のステークホルダーの視点など、CSR機能の詳細を知ることができます。このようにTDKが社会とのつながりを十分に理解していることは高く評価できます。

重要な社会課題

レポートでは、私たちの取り巻く社会課題として、情報格差、障がい者、高齢化、気候変動、エネルギー消費量、交通事故の6つを挙げています。それぞれの課題について、ニーズへの対応の進捗状況を把握するための具体的な測定基準(世界の交通事故死亡者数など)を定めています。

これまでの影響

進行中の活動は数多くあるものの、結果を報告するのは時期尚早かもしれません。ただし例外もあり、TDKが全社でカーボンニュートラルを達成したことは特筆すべきことです。

将来的に考えられる影響

以下のようなテクノロジーを通じた将来的な貢献が提案されており、大きな社会的価値が期待されます。

  • 世界の高齢者層の医療ニーズに応えるテクノロジー
  • 地方や地域の効率的なエネルギーの利用と輸送をサポートするテクノロジー

本レポートで取り上げられた活動によると、TDKは良き企業市民として、倫理、多様性、責任に対する期待に応えています。

TDKの取り組みやプログラムの中で改善すべき部分

ポートフォリオ内の活動の優先順位づけ

TDKはGRIガイドラインに対応し、多様なCSR活動と目標を報告しています。しかし、こうした活動を支える一貫した戦略が見えてきません。次の段階(2015年度の予定)で優先順位を設定すれば、この懸念の解消に役立つでしょう。優先順位づけの実践を戦略的レビューと捉え、ステークホルダーの視点と、中長期的に優先して取り組むべき主要なビジネス上の制約や成長機会を組み込むべきです。企業は一般的に、コンプライアンス活動(監査請求への対応など)、企業の社会的責任活動(多様性の実現や倫理的なサプライチェーンなど)、戦略的取り組み(新しい医療ソリューションをもたらすイノベーションなど)の差別化を図っています。また、主要企業は自社の活動ポートフォリオを経時的に発展させ、リソースを追加してコンプライアンスに対する戦略的取り組みに力を入れます。TDKは、こうした社会的ニーズへの対応に重点を置くことで、社会的影響力や、ビジネス成長、あるいは競争優位性を実現する機会の最大化を目指すべきです。

ビジネスの成功と具体的な社会のニーズとの関連づけ

TDKは社会における重要なニーズをいくつか特定していますが、2015年のレポートでは、同社の中長期的成長戦略がそれらのニーズにどのように関連づけられているのか、また、どのような戦略でTDKがそれらのニーズに貢献し、前進させていけるのかが示されていませんでした。私たちは、企業にとってはビジネスの成功と社会的ニーズへの取り組みを直接的に結び付ける、具体的な目標や目的が大切だと考えています。例えば、TDKは自社の自動運転テクノロジーが、安全・安心・快適なカーライフを実現することや、世界の交通事故死亡者数を減らせることを、より明確に示すことができます。ビジネスと社会的影響の両方の機会を生かすことで、124万人規模の市場において大きな収益を上げられる可能性があります。

戦略的CSRと社会変革を支える組織構造の確立

TDKは、多様性を備えた他の企業と同様のガバナンス構造を備えています。主要企業はすでに、社内の共有価値活動について注目を集め、パフォーマンスを高めるための以下のような施設を設立しています。

  • センター・オブ・エクセレンス:分野横断パートナーシップ、公衆衛生、環境科学など、社会問題に関連の深い分野で経験豊富なシニアリーダーやスタッフを配置。
  • ソーシャルイノベーション研究所:設計チームと社会的影響力のある専門家が、十分なサービスを受けられない人々の未対応ニーズに取り組む革新的製品のパイプラインを支援。

TDKが積極的に取り組むべき課題とその理由

私たちは、TDKが投資家をはじめとするステークホルダーに非財務情報を公開すべきだという意見で一致しています。企業は、共有価値の観点から、自社のビジネスが社会や環境に大きな影響を与えていることに注目し、可能な場合は財務業績を社会の改善につなげていくべきです。企業、業界、市場から広く理解を得るためには、測定基準の設定も役立つでしょう。

TDKが企業の成長と成功にとって重要な問題を最優先する中で、私たちは重点分野として以下の3分野を推奨します。

  1. テクノロジーによる共有価値イノベーションを追求し、特に障がい者、高齢者、交通事故のリスクが最も高い人々のニーズに応える新製品を通じて競争優位性を目指すこと。
    理由:これらの市場規模はかなり大きく、TDKにとって大きな成長推進要因となり得るため。
  2. バリューチェーンの効率性および生産性を継続的に改善し、事業全般におけるコストとエネルギー消費の低減を図る新たな方法を探求すること。
    理由:TDKは早い段階から順調に効率化を図っており、長期的に事業を維持するためには持続的な改善を続けるべきであるため。
  3. 監査だけでなくサプライチェーンの強化に投資し、サプライヤーやバイヤーの生産能力を高め、社会および環境における共通の重要な目的の下にパートナーをまとめていく役割を果たすこと。
    理由:残念ながら、TDKの業界にはサプライチェーン・パートナーが引き起こしたリスクに対する脆弱性が露呈した企業が多く見受けられるため。TDKはこれらパートナーと緊密に協力することで新たな価値を付加し、外部企業のリソースを利用できる。
Wong Lai Yong

ワン・レイ・ヨン博士
ファースト・ペンギン創立者

ベテランのCSRコンサルタントであるワン・レイ・ヨン(Wong Lai Yong)博士は、多国籍企業の経営に関する豊富な知識や国際問題および社会的課題への実践に関する専門性を備え、流暢な5ヵ国語を駆使してアジア全域で効果的なCSR運営について企業や教育機関に助言を行っています。また、社会的責任能力の開発を目指し、革新的な教育プログラムを提供するソーシャルエンタープライズであるファースト・ペンギンを創立。マレーシアサインズ大学の産業・地域交流アドバイザーなど、国内およびアジア全域のコミュニティ開発に積極的に取り組んでいます。横浜国立大学で経営学の博士号を、慶應義塾大学でMBAを取得しています。

これは、TDKによるCSRの取り組み(TDK CSR レポート 2015の中で述べられている)を、人材の育成とサプライチェーンの管理に注目して評価したレビューです。全体として本レポートは、TDKが地球環境を活性化および保護し、快適で安全な社会に貢献することにより、「創造によって文化、産業に貢献する」という社是を実現してきたことをたたえています。

TDKによるCSRの取り組みのまとめ

[人材の育成]

  • 教育ツールおよびプログラムの統一:TDKは欧州、米国、およびASEAN諸国の事業所や子会社で、ベストプラクティス、研修ツール、プログラムを共有することによってグループのシナジーを活用し、さらに向上させてきました。ここに中国と日本を追加する計画が進められています。
  • 全グループ規模の人材管理システムの構築:TDKはグループ全体で人材管理システムを統合してきました。このシステムは人材の適材適所の配置だけでなく、グループ全体の透明性と多様性を推進し、達成することを目的として設置されました。
  • 専門家による研究会:戦略策定と上級管理職の人材育成を目的として、非財務情報開示や多様性の専門家を招く取り組みを行いました。
  • 国際経営開発(IMD)研修、異文化コミュニケーション研修、海外トレーニー制度:グループのシナジーを高め、「ONE TDK」の精神を定着させるための多様なプログラムが立ち上げられました。

[サプライチェーンの管理]

  • サプライヤーおよびバイヤーとしての取り組みを明記:川中企業としての性質を備えたTDKは、サプライヤーであると同時にバイヤーでもあるという2つの役割を、それぞれ明確かつ詳細に述べています。
  • CSR内部監査員養成研修:TDKのCSR内部監査員養成研修プログラムは、自社のCSRレベルを向上させる効果的な取り組みです。これは現地の条件を考慮し、それに合わせて調整されています。例えば、中国における監査研修は多くの場合、中国国内の条件をより深く理解するためのケーススタディーに重点を置いて行われました。
  • 積極的な自己批判:TDKグループは積極的に自社のCSR管理システムに関与しています。このことは、陈淑霞(Shelly Chen)氏の「担当者のタスクや評価方法、監査結果の共有など、CSRマネジメントシステムの成熟度を問われることが多くあるため、要領の改訂も含め適切に対応していきます」という言葉にも表れています。
  • ※詳しい内容はこちらをご覧ください。

[その他]

  • 環境:TDK株式会社代表取締役社長である上釜健宏氏は、「環境負荷低減の観点からも素材からこだわり抜いたモノづくりを推進していきます」という力強いメッセージにより、TDKの環境への取り組みを表明しました。これを補完するさまざまな具体的取り組みが行われています(「TDKの磁性技術から広がる未来」※1、「地球環境との共生」※2)。
  • GRI指標:具体的かつ計画的な手順を踏んでGRIガイドライン第4版に沿った報告を行い、重要課題(マテリアリティ)を特定するというTDKの取り組みは、TDKが真摯に多様なステークホルダーに対応しようとしている姿勢を示しています。
  • ※1 詳しい内容はこちらをご覧ください。
  • ※2 詳しい内容はこちらをご覧ください。

推奨する改善点

[人材の育成]

  • 異文化コミュニケーション研修:TDKの海外事業は売上高でも従業員数でも90%以上を占めていますが、これまでに異文化コミュニケーション研修に参加した人の数は426名にとどまっています。文化への感受性を高め、真のグローバル企業になるというTDKの目的を実現させるためには、e-ラーニングや「トレーナー研修」制度を通じて研修をより日常的に進めていくべきです。
  • TDK行動規範/コーポレート・ガバナンス研修:TDKは117の国内・海外連結子会社を持ち、グループ全体の従業員数は全世界で8万8,000名を超えています。そのため、TDK行動規範を現地語に翻訳し、さらにすべての子会社でそれぞれの局面に合わせた企業行動規範/コーポレート・ガバナンス研修(人権を含む)を行うことを強く推奨します。
  • 従業員ボランティア制度:従業員ボランティア制度を通じて従業員の能力を引き出す取り組みを強く推奨します。こうした制度は、従業員の能力を向上させるだけでなく、TDKの事業所がある地域社会の信頼を得ることにつながるでしょう。

[サプライチェーンの管理]

  • サプライヤー行動規範:社会的責任を果たす国際企業であるTDKが、サプライチェーンの社会的パフォーマンス、環境管理システム、労働法および人権法と国際基準の遵守、職場の安全およびビジネス慣行全般を評価することを推奨します。
  • 人権:「人権」という言葉はいくつかのセクションで取り上げられていますが、一般的な説明しかされておらず、その詳細は曖昧です。この課題に対するTDKの原則と実践の具体例、TDKとそのサプライチェーンに適用される人権方針があるかどうか、サプライチェーン全体でどのように労働者を雇用し、保護するかについてのTDKの指針と具体例が、レポートを読んでも見えてきません。TDKは特に人権リスクを伴う紛争鉱物をはじめとする原料を使用し、マレーシアなど人権侵害で知られた国で事業を展開しているため、人権に注意を払い、十分な説明をすることが不可欠です。
  • トレーサビリティとデューディリジェンス:この2つの言葉も「人権」と同じ課題を抱えており、十分な説明がされていません。トレーサビリティとデューディリジェンスは品質、人権、環境問題に関連しているため、より詳細な説明を推奨します。
  • 明確な数値目標の設定:明確な数値目標の設定は、サプライチェーンの管理に真摯に取り組んでいることを示す上で役立つでしょう。その例として、調達支出のうち監査を行う支出の割合、毎年新たに監査するサプライヤーの数と監査の間隔(年数)、新たにCSR内部監査員研修を受ける従業員の数などを定めることが考えられます。

[その他]

  • 水消費量:企業の持続可能性を取り上げるとき、CO2排出削減に加えて最近注目を集めているのが水資源危機です。水消費量を測定し、消費削減目標を定めることを強く推奨します。

TDKが主に取り組むべき社会課題とその理由

私たちを取り巻く社会課題の中で、TDKが主に取り組むべき3つの課題とそれぞれの理由は以下のとおりです。

  • ※ 詳しい内容はこちらをご覧ください。
  • (1)情報格差:発展途上国のモバイルブロードバンド利用率が先進国の4分の1にとどまっているという状況を考えると、TDKは情報通信テクノロジー企業として、情報格差の問題に取り組むべきです。それにより、貧困の軽減や人材の育成といった社会課題に貢献する可能性があります。
  • (2)気候変動、(3)エネルギー消費量:TDK独自の先進的なテクノロジーを利用すれば、エネルギー効率や燃料効率の高い製品を開発および販売し、気候変動の抑制とエネルギー消費量の削減に多様な影響を与えることができます。

今後は、TDKがバリューチェーン全体で人権および環境に及ぼす影響の追跡に取り組むことに期待しています。

エイドリアン・ヘンリクス氏

エイドリアン・ヘンリクス氏(Adrian Henriques)
独立アドバイザー

エイドリアン・ヘンリクス(Adrian Henriques)氏は、企業の社会的責任、説明責任、持続可能性を専門とするアドバイザーです。企業をはじめとする組織への助言と監査、ステークホルダー・ファシリテーション、研究、研修の分野を中心に活動しています。アディダス、ロシュ、マークス&スペンサーなどの企業のほか、英国国際開発省、ユニセフ、各種NGO、中小企業、社会事業に携わってきました。社会の持続可能性に関する研究を行い、説明責任、影響評価、社会的監査などを幅広く説いています。
ミドルセックス大学ビジネススクールで説明責任とCSRの分野の客員教授を務めています。
著書に「Corporate Impact: measuring and managing your social footprint」などがあります。

TDKが大手電子部品メーカーとしてこのCSRレポートを作成したことは、評価に値します。本レポートには、責任ある経営と持続可能性のガバナンスに対するTDKの取り組みが明確に示されています。さらに、TDKがサプライヤーと顧客を含むバリューチェーンにおける自社の役割をどのように考えているかが分かります。
TDKは、電子機器と電気機械の分野で多くの製品を提供しています。これは本レポートで明らかにされているとおり、同社が幅広い日用品の持続可能性パフォーマンスに影響を与える可能性があることを意味しています。そのためTDKは、特に環境パフォーマンスを考慮したイノベーションを重視してきました。しかし本レポートでは、多様なTDK製品(自動車などTDK製品が組み込まれる製品ではなく)が実際にどのような働きをしているのかについての説明が十分ではありません。ウェブサイトを引用するなどして十分に説明することで、読者はTDKの持続可能性をさらに高く評価することができるでしょう。

CO2排出パフォーマンス

環境については、TDKは生産活動に伴うCO2排出量と使用中の製品によるCO2排出削減量を同じにする「カーボンニュートラル」に力を入れています。これはTDKの製品ラインにおけるエネルギー効率改善イノベーションの推進につながるため、開示すべき重要な指標です。そして、この課題についてTDKのパフォーマンスが上昇傾向にあるのは良いことです。しかし本レポートでは、主要なCO2数値の根拠となっているプロトコルの詳細や検証の有無が明らかになっていません。読者が納得できるよう、検証も行うべきでしょう。
現在のカーボンニュートラル分析にサプライチェーンのCO2排出評価を加えれば、興味深いレポートになったと思います。そうすれば、ライフサイクルの観点から捉えたTDK製品の貢献度や、製品のカーボンニュートラル性のおおよその評価が分かるようになるためです。また、エネルギー使用量の数値だけが重要というわけではないとしても、レポートの中で直接的なエネルギー消費量をCO2に換算することも有用と考えられます。

幅広い影響とその分析

しかしTDKにとっても世界にとっても、直面する環境課題はCO2とエネルギー使用量だけではありません。生産活動に伴う水の使用と排出も重要です。今後の報告書では、そうした分野のパフォーマンスも公開すべきです。TDKがGRIガイドライン第4版に基づく体系的な重要課題(マテリアリティ)プロセスを実施していても、幅広い環境パフォーマンスの数値は不要ということにはなりません。
これ以外に国際的な懸念が高まっている分野として、レアアースと紛争鉱物の消費量がありますが、本レポートではこれらの問題がほとんど取り上げられていません。こうした課題への対処についていくらかの情報が提供されているだけで、TDKの事業がどの程度これらの原材料に依存しているのか、総消費量がどの程度なのかは明らかにされていません。
また、公開される環境情報の分野にかかわらず、製品ごとに詳細情報を提供すべきです。そうすれば、多くの重要な疑問に答えることができるでしょう。例えば、CO2排出削減に優れたパフォーマンスを示す製品ラインはどれか、TDKがCO2排出削減のために率先して投資やイノベーションを行っている製品ラインはどれか、といった疑問です。

サプライチェーンのパフォーマンス

サプライチェーンが環境にもたらす影響については、TDKの監査プログラムは包括的であり、全体的な監査結果が提供されています。しかし、サプライヤーの監査結果をもう少し詳しく取り上げていれば分かりやすかったでしょう。何が成功したのか、改善すべきは主にどの分野かなど、読者はTDKのサプライヤーが直面している重要な課題を知るべきです。例えば、労働安全衛生はCSR監査における最大のカテゴリーであり、監査項目のほぼ半分を占めています。しかしそれらの事象はどのような性質のものであり、その深刻度はどれほどのものだったのでしょうか。労働安全衛生の報告については、一般に認められた標準的な手法があり、TDKはそれに従うべきです。繰り返しますが、結果は製品ごとに、そして必要に応じてサプライヤーごとにも分析されるべきです。

原単位基準

最後に、TDKの包括的な環境パフォーマンスのレポートには、原単位基準の数値が含められるべきです。例えば、ユニット売上高ごとのCO2パフォーマンスは、TDKの持続可能性パフォーマンスを業績に関連付ける上で役立つでしょう。これ以外にも、TDKが特定した持続可能性に関する世界的課題について、どの程度のパフォーマンスを達成しているかを示す適切な測定基準があるかもしれません。そしてどの部分でパフォーマンスの向上が必要かを示すことも重要です。

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