CSR活動 | 社会からの評価

第三者意見

藤井 敏彦 氏

藤井 敏彦 氏(ふじい としひこ)
独立行政法人 経済産業研究所
コンサルティングフェロー

1.将来への意志を表す

TDKのCSR報告書は毎年着実に前進している。
2015年に掲げた企業ビジョンVision2035のもと、2016年6月に就任した石黒社長のミッションを強い意志をもって表象しており、今年度のレポートは、昨年度に増して意欲的内容である。

2.マテリアリティの設定

本年度のマテリアリティ設定は、TDKグループのCSRをより体系化された新しい段階に引き上げるものとして高く評価したい。とりわけ、ステップ1から4まで設定の過程を明示し、海外の有識者の参加を得たことによって説得力のあるものとなっている。バリューチェーンにおける重要課題ごとの整理は、全体像の俯瞰と今後の方向性の明確化を可能にしている。

3.多様性の尊重とグローバルな人材育成

TDKの経営に一貫してある人の尊重とグローバル性は、人材育成についての報告に毎年明確に現れる。中でもIMD研修に関する記載から、参加者がグローバルなリーダーシップの獲得に強くコミットしている姿が伝わり心強い。私はかねて、人材に関する社会的責任を経営のグローバル化の文脈に置いたとき、グローバルに統一された評価基準の設定とそれに基づく公平な評価の実践こそ日本企業の最大の課題の一つであると考えているが、その点でTDKは常に先駆者であり続けている。グローバル人材管理システムのさらなる展開にも大いに期待したい。

4.サプライヤー、バイヤーとしての取り組み

2014年のTDKのCSR報告書に対する第三者意見として「今日、サプライチェーンに関する人権・環境問題はNGOのみならず関連規制当局の強い関心の対象となっている。同時に企業にとってはCSRの諸項目の中でも最も対処が難しいものの一つである」と述べたが、これは今日でも変わらない。また、将来にわたって重要性は増すことはあっても減ずることはないだろう。その観点から、外国人労働者の強制労働が社会問題となったマレーシアにおいて迅速にCSR監査を自主的に受けたこと、またその中からEICCの要件にあった体制整備が課題として浮上したことを報告していることなど、人権問題へのTDKのコミットメントの強さを示すものとして評価したい。また、主要な委託加工先へのCSR監査の拡大、その結果として有害物質管理について指導を行ったことの開示も重要な前進として歓迎したい。

5.環境ビジョン2035の策定

環境面については、COP21などの国際情勢も受ける形で新たに環境ビジョン2035が設定された。環境問題への取り組みの「超長期」の羅針盤を得たことになる。重要な成果である。

6.今後の課題と期待

まず、マテリアリティ設定後の欠かせないステップとして、KPIの設定とPDCAサイクルの実施が最も重要な今後の課題であろう。来年度の報告を期待したい。
また、サプライチェーンの人権課題に関しては、主要委託加工先の監査の結果についてもより詳細な情報開示が望ましい。紛争鉱物は単独での取り組みには技術的限界がある問題である。トレーサビリティの向上 に向けた国際的枠組みづくりへの貢献を期待したい。
環境については、ライフサイクル的視点でCO2原単位を2035年までに半減するとの目標に向かってたゆまぬ努力を期待したい。

全体として本年度の報告者は創業100年に向けた新たなスタートにふさわしい充実した内容となっている。初年度の確実な前進を来年度の報告書で確認できることを期待したい。

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