CSR活動 | 社会からの評価

第三者意見

藤井 敏彦 氏

藤井 敏彦 氏(ふじい としひこ)
独立行政法人 経済産業研究所
コンサルティングフェロー

新たなる飛躍に向けて

TDKのCSRへの取り組みは本年も着実な前進を示した。広いステークホルダーに読みやすく編集された期待に応える内容の報告書である。同時に本報告書は今後のさらなる飛躍に向けた課題も明らかにしている。以下、4つの重要課題およびコンプライアンスにつきコメントをしたい。

1.技術による世界への貢献

「融合によるコトづくり」。石黒社長が最重点とされている課題である。報告書を通じTDKの持つ諸技術およびその融合が社会的に積極的インパクトを持っており、また、大きな潜在力があることが明確に伝わってくる。今後、技術的潜在力の社会的顕在化の上で、TDKが創造しようとする社会像をより明確にすることは大きな助けになるであろう。「コト」を社会の姿の中でより統合的に示すことでステークホルダーへの訴求力は一層高まるであろう。

2.人材の育成

2016年度の目標とされたグローバルにおけるKPI設定推進から、本年度の目標は現実味を帯びたデータベース構築に設定されている。人材についてのグローバルなKPI設定はその重要度に比例して困難度も高いものであり、単年度での実現が難しかったことは理解できる。まずは現状の把握に努めるとの本年度の目標も適当なものであろう。ただ、どのような困難を乗り越えようとしているのかについての具体的な取り組みの現状の開示をもう少し示すべきであろう。グローバル人材の育成についてのステークホルダーダイアログは読み応えがあり、TDKが向かおうとしている方向性は大まかに示されている点は高く評価したいが、制度化の上での途中経過の開示はKPI設定を促進するステップであり、石黒社長の言葉にある「ステークホルダーの信頼を得られるか」という点でも必要なものであろう。

3.サプライチェーンにおける社会・環境配慮

TDKの本分野における取り組みは常に先進的であり、高く評価されるべきものである。グローバルKPI設定など昨年度の目標はすべて達成されている。また、TDK人権ポリシーの策定、紛争鉱物データ交換規格の改定にリーダーシップを発揮していることも素晴らしい。一方、開示という観点からは課題が残る。CSR調達のKPIとして、サプライヤー改善指導社数についての一部記述はあるが、全体としてのCSR適合サプライヤー比率について、報告書に記載はなく、その内容の評価が外部からはできない。KPIや人権ポリシーは絶えず社会的な精査を受けながらよりよいものとし続けることが大切であり、その意味からも来年度の報告書での開示を期待したい。サプライチェーンにおけるTDKの取り組みが多くの企業の範となる高い質のものであるだけになおさらである。

4.地球環境との共生

カーボンニュートラルの目標を前倒しで達成するなどTDKの環境面の取り組みも傑出したものである。製造工程にさらにICTを導入することによって広い意味で資源の効率利用を可能にするという石黒社長のコミットメント、具現化である秋田みらいプロジェクトにも現場発の環境対策として強く期待したい。重要なテーマはライフサイクル視点での環境負荷の削減である。
現時点の目標は、カーボンニュートラルの延長線上にあるが、従来スコープ外だった活動の基盤整備を進め、ライフサイクル視点を織り込んだ目標の設定を期待したい。

5.コンプライアンス

昨年度の当局の立ち入り検査への協力について報告していることを評価したい。コンプライアンスの体制強化は高い透明性と問題があった場合の事後対応こそが鍵である。

以上、5つの項目についてコメントを述べた。全体として質の高い報告として高く評価したい。いくつか注文をつけたが、来年度に向けたさらなる飛躍の糧となれば幸いである。

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